紫のモンブラン
道幸綾真
紫のモンブラン
線香をあげた夏日は歌なんてなくても通じあえてたのにな
青い春過ぎたし暑い夏過ぎた、行灯つけて秋の「あ」探し
玉ねぎが溶けなくなって根菜としての矜持を取り戻す頃
#三十代#トレンドカラー#秋リップ 検索結果をマスクと見ている
玄関に一夜で張った蜘蛛の巣はよく分からない季節のたより
吟行に向いた季節が来たのならわたしもきみをスケッチしたい
政治家か被保護世帯に突きつける適格請求ぼくのではない
寝床までアイスみたいなひと夏の恋であれたらよかったのかなあ
ワクチンでだけ熱を出すぼくもまた生きてると言えたもう来ない秋
秋もなお弱冷房車だ腐られちゃ困りますという顔をしている
赤い羽根募金集めをする子ども入れないおとなどちらもが僕
あの山を描くのに使った色だから紫のモンブランが正しい
赤ちゃんの声が音感を試してるちょうど試験の季節なのかも
落ち着かない選曲をするカフェだけど音楽家も栗ラテが飲みたい
長袖に隠してしまう秋が来るあのとき触れた意味を聞けずに
冷まじき胸に数える希望のかず新着図書の予約のかず
オルタナを眺める瞳をしたきみの義手が冷たい 握らせてくれ
去る夏の夢を見ていたトンボロは見えてもきっと歩めなかった
芸術の秋だから絵に描くための皿を買おうよ二個組がいい
銀化瓶すぐ分かったよあの夏にボトルメールを出して良かった
紫のモンブラン 道幸綾真 @kouama
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