こたえあわせ
「かいとさんっ」
彼女は息切れが酷く、走ってきたようだ。
「つぼみさん。」
僕は覚悟を決め、心の内を明かした。
「つぼみさん、何年か前に僕にこの景色を教えてくれたよね。」
「え?、」
「喉がかわいて動けなかった時、君が水をくれたよね。」
つぼみさんは思い出したように目が潤んだ。
つぼみさんの肩が震える。
「あのときの…」
とうとう泣き出したつぼみさんは震えた声で涙を流しながら言う。
「わたし、わたし、あなたのこと心配で堪らなくて…でもよかった。この前あなたが夢に出てきてまたふと思い出したの!それからそれから…」
本当に泣いているところ申し訳ないがマシンガントークのような速さで彼女が話すものだから僕は不覚にも笑ってしまう。
「どうしたんですか!?」
「つぼみさんが結構話すものだからちょっと面白くなってさ。ごめん。」
笑いを堪えながら話すと彼女はきょとんとしてこちらを見る。顔が少し火照ると彼女も一緒になって笑ってくれた。
その後は2人で何度か交流を繰り返し、交際を始めてもう長年経つ。
そして妹とはうまく和解し、障害者雇用の職場に勤めながらうまくやっていて、おばさんや祖母とも縁を切り出した。
もうすぐ彼女と僕は同棲を始める。今は引越しの準備を着々と進めているところである。
あの景色がこの出会いをくれた。
僕らをひきつけてくれた。
あの丘から、海の汽笛が聴こえる。
果てしなく続く海へ、そして私たちにも。
船の汽笛が聴こえる はな崎カ子 @hnskkk2525
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