思い出はいつも
僕は小さな頃、父と母が大好きだった。
僕に欲しいものがあれば必ず買ってくれたし自分が愛されていると実感出来る程に僕に対する扱いは甘々しかった。
だがそんな僕に、妹ができた。
実は妹は障害持ちの子供であった。
最初は父母共に笑顔で妹の世話をしていたが妹がどんどん成長するにつれて2人の顔はまるでゾンビのようにやつれていった。
とうとう妹は両親の言うことを聞かなくなって、父はギャンブルに入り浸り、母は夜遅くまで起きていることが多くなった。
いつしか僕の叔母と祖母が一緒に住んでくれるようになってから僕は家から追い出される回数が増えた。天気はどうでもお構い無し。
そんな生き地獄のような毎日に光が差す。
暑い暑い夏の日、僕は喉の乾きが酷いまま外に追い出されていた。日照りはさすがに無理だと体が拒絶を起こしたのか本能でオンボロアパートの日陰に2、3時間近く棒立ちしていた。意識が朦朧とし、倒れた時だ。一人の女の子が手を差し伸べてくれた。
「ありがとう。本当に喉が渇いていたんだ。」
冷たい水をものすごい速度で体の中へ取り込む。そのあと会話はしたことは覚えているが水を飲めた安心感と目眩で会話の内容は覚えていなかった。
だがなぜだかその女の子が教えてくれた海の見える丘のことははっきりと覚えていた。
そのとき僕はその景色を見て何を思ったのか、今は全く覚えていないが。
だが僕はその景色に釣られるように家から追い出されるたびにその景色をずっと飽きずに眺めていた。
あれから何年経っただろう。
今思えばあの女の子は空想だったのだろうか。でもあの女の子がいなければ確実に僕は生きていない。。
あの女の子は…どんな顔をしていただろう。
頭の中でぐるぐる考えているとひとつ思い当たる人がいる。あの人だ。いやあの人かも。
と思いつつ、ある人に連絡をとった。
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