第8話目的地
あれからメアリーの遺体を埋めた、いくら敵だったとは言え魔物の餌になるのは憐れに思えた。
翌日、遅めの朝食をとる、昨日話寝るのがおそくなってしまったからね。
「今から出発すれば明るい内につく」
野営の後始末をすると私は切り出した、さすがにメアリー並の相手は来ないと思いたいが、刺客が心配だった。
マーシャとディーノは頷く、山道をあるいていく、幸い天気はいい。
一度眺めのいい開けた所で昼食をとる、いい景色だ。
そのあと特になんの障害もなく目的地に着いた、山の中腹に小さな家があった。
在宅してればいいが、私はドアをノックする。
「患者がいるから診てくれないか?」
私が患者がいると言うと中から男が出て来た。
マスクを付けた、いかにも医者という風体の男だった。
「患者は誰だ?」
「マーシャといいます、ここでは言えないので中で診てもらえないでしょうか?」
「とにかく三人とも中に入れ…」
待合室の様な所に通される、私とディーノはここで待つように指示をうける。
「心配するな、スネイクさんは人間でもちゃんと診る男だ」
ディーノは魔族と言う事で警戒してるようだ、無理もない、私は前世で診てもらった事があるが普通は疑うだろう。
暫くして診察を終えたのか二人が出てくる、マーシャの顔は明るい、良い結果だったのだろう。
「薬を処方してやるから今日は泊まっていけ、それと女名前は?」
「すまない名乗って無かったな、コカだ、こいつはディーノと言う」
「そうかお前にも話がある入れ」
スネイクに促され診察室に入る、前世で来たときと変わらないな。
「座れ」
私はスネイクに向かって座る。
「転生後の記憶障害はないか?」
「解るのか?まあ、見た目の違いは角のある無し位だものな、ないよ、全部思い出した」
「そうか………スプライトから手紙を預かっている」
手渡された手紙をその場で開ける。
相変わらず字が綺麗だな、私は親友の字の上手さに感心しつつ読み進む。
メアリーとの戦闘を観られていた、それどころかマーシャを勧誘した辺りから情報が筒抜けだった。
『予定より少し早いがケジメを付ける時か…』
前世の記憶を取り戻した上で、ディーノを殺さず守る道を選んだ、魔王様への背信行為だ。
すでに覚悟は決まっている、あとはマーシャの事だ、薬を処方すると言ったが完治するのだろか。
「手紙ありがとうな、あとマーシャの事何だか完治する病なんだよな?」
「ああ……理由は違うがお前と同じ悩みだった、薬を飲めば完治する」
私と同じ悩み………不妊症の一種だったのか。
私は実の息子が六人いるが、一人目が中々出来ないので前世で不妊治療を受けていた。
『完治したあとは娘出来るまで産むか…息子六人だった…スプライトにも産休で迷惑をかけたから娘は諦めたんだっけ…』
そういや末の息子がスプライトと結婚したいとか言ってたが、母さんの親友と結婚するとか辞めてくれって反対したな。
一応本人に聞いたが、スプライトも私の息子とか無理とか言ってたな。
しかしマーシャ不妊症だったのか、それもあって独身だったか、子が出来ないのを解っていて結婚出来る男は限られている。
人は魔族より死にやすく、寿命も短い、子をある程度作るのが美徳とされている。
何よりマーシャ自身が子を授かりたかったのだろう。
そうでなければケーン・スネイクなどという都市伝説レベルの医者を探したりはしまい。
私の前世が魔族で、元患者で無ければいつここにこれたか……
「マーシャの治療費は私が払うから、よろしく頼むよ」
私は彼に礼を言うと部屋をでる。
「それでマーシャ、正式にパーティー組んでくれるかい?」
「もちろんよ!これからもよろしくね!」
満面の笑みの笑みで応えてくれた、女にとって子が産めない苦しさはよく解る、本当にここに連れてこれて良かった。
過去の不妊治療の記憶が蘇り、涙腺が緩んだ、マーシャ程の魔術師が仲間になった、素晴らしい日だ泣くのはよくないな。
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