第5話予感

「昨日は楽しかったな」

昨日の飲み会を思い出す、あんなに楽しくのんだのはいついらいか。

しかし、すぐに気持ちを切り替えた。

そろそろ女神か、魔王軍か、あるいは両方から動きがあるはずだ。

前世の記憶が蘇ってからはディーノを鍛え続けた、女神に渡らないように、自分の身を守れる力を身に着けさせた。

才能は並み以上にあった、だが勇者の力あれは駄目だ、彼の体を調べて解った。

勇者とは人間のリミッターを外して通常で百の力、寿命を削り千の力を発揮する存在だった。

ディーノは私の言いつけを守り、よく鍛錬してるがまだ足りない、鬼女と呼ばれた前世の私を超えるレベルにしたい。

私はディーノに一人で鍛錬するように言い、買い物に出掛ける。

するとマーシャが子供達に絡まれていた。

「マーシャねーちゃん、アル中なのに今日は飲んでないの?」

「はは、私でも飲まない日はあるよ」

「嘘だー」

マーシャは子供好きのようだ、本当の姉の様に子供に接している。

「マーシャおはよう」

「あらコカじゃない、おはよう」

「ねーちゃんの友達?」

「この一人もアル中なの?」

ふむ、マーシャは少し子供に甘いのではないか、初対面の大人にアル中とは……

「この一人の仲間になったの仮だけどね、なので暫く会えなくなるから」

子供達は悲しい顔をするが、すぐに笑顔で私で「マーシャお姉ちゃんのこと守ってね?」とお願いしてきた。


私はマーシャと別れると武器屋に向かう。

ケーン・スネイクの住処まで山中を歩く、どんなに急いでも山の中で一回は野宿だ。

何があるかわからない、予備の武器も必要だ、私は自分のメイスとディーノのロングソードを買う。

その後も道具屋や食料品店で保存食や必要な物を買い揃えた。

念入りな準備を終えて、出発の日を向かえる。

私達は広場に集合した、マーシャも万全な準備をしたようだ、大きな鞄がパンパンだった。

その日は快晴で順調に進んだ、街を抜け、街道を通り抜け、山道にはいる。

地図を頼りに進んでいく、途中昼食と休憩をとり、やがて野営のポイントにたどり着く。

テントを貼り、パンと干し肉を食べる。

水は打合わせの通りマーシャが魔法で出してくれた、空気中の水分を集める魔法だそうだ。

その日は水だけ飲んだ、匂いののある飲み物は極力避けた、魔物や刺客を警戒してのことだ。

やがて日が暮れる、マーシャに魔物避けの結界を張ってもらい、交代で休む事にした。

私は二人をテントで休ませ見張りをする、今日も綺麗な月夜だった。


暫くすると妙な気配がした。

人間?魔物?いや、これは呪われた武器の類だ。

『並の魔剣の気配じゃない……魔王軍か?』

女神の手先が持つ武器の気配ではない、私が知る限り呪われた武器を好き好んで使う馬鹿は居なかったはず。

私はマーシャを起こす。

「魔物でもでた?」

「嫌な気配がする、もしもの時は二人でスネイクの家をめざしてくれ、奴は人間でも女の病は絶対に診るからな」

「女に弱いの?」

「奴は母親が病気で死んで医者を目指した、だから女の患者は絶対に診るという話しだ」


私は自分のメイスを持ち、気配の方に向かっていく。

「やあ、そのメイスよく手入れされてるね」

石灰のような白髪の女が話しかけてきた、二十代ぐらいの若い女、異様な気配はその女が持つ武器から発せられていた。

「そんな物騒な武器を持って何をしている?」

「すまない気配が漏れた?起こしてしまったかな?」

女が謝罪してきた、何故そんな武器を持って平生としてるんだ。

「私はメアリー、ホワイトスミスをしてる…」

メアリーは金属加工職人と名乗った。

「セッ―」

私はメアリーが言葉を発する前にメイスを撃ち込んだ、彼女は後に飛んで躱す。

「お前!今何をしようとした!」

魔剣の類には特定の言葉で効果を起動するものがある、嫌な予感がした。

「解る?首を刎ねる呪いだよ、魔力や運が無いと即死する」 

即死効果付きの武器だと?

「凄いだろ?私の…いや私達の最高の業物、ギロチンさ!」

メアリーは満面の笑みで宣言した。




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