第4話月夜の晩に
その日は綺麗な月夜だった、私はディーノを連れ約束の店に行く。
入り口でマーシャの名を告げると個室に通された、予約してくれたようだ。
『気が利くな、個室ならディーノも緊張せず飲めるだろうな』
あれ?今日は私が払うといってあったな、個室代は想定して無かったが必要経費だ、たまには個室でゆっくりと言うのも良いだろう。
「よく来たわね、魔術師のマーシャです」
「……」
「ディーノ挨拶しな」
私に促されディーノは挨拶をする、ちょっとマーシャに見惚れてた?
マーシャ化粧してるし、何かいい匂いするな香水か?
『歳下の男に舐められないように気合いを入れてきたのかな…』
私にとってディーノは息子みたいなもんだが、彼女から見れば命を預ける相手になる、普通は気を使うよな。
「最初は同じもので乾杯しましょうか?ディーノくんウイスキーソーダアップが好きなのよね?」
「はい、銘柄はお任せします」
「私も任せるわ」
暫くして酒が提供される、三人で乾杯し、一口飲む、爽やかな森の香りがして、さっぱりした飲み口、マーシャに任せて正解だったな。
ディーノのも気に入ったのか一口で飲みきった。
「次も同じモノでいい?」
マーシャがディーノにオーダーを聞いてきた。
「お願いします」
店員に追加をオーダする。
「同じ物一つと黒エールを、コカは?」
「私も黒もらうよ」
ふとマーシャがグラスを手に取り店員に質問した。
「このグラス…ホワイトスミス アルバスの?」
「オーナーがアルバス氏のファンで、オークションで落としたんですよ」
「そうなんだ、ありがとう」
マーシャが羨ましい様な顔をしていたので、私は尋ねてみた。
「アルバスって凄いやつなのか?酒器にまで気がまわらなくてね」
「アルバス氏は一度話した事あるけど、凄い博識で凄い人なのよ、あれほどの女の職人は見たことないわ」
なるほどアルバスと言うのは女鍛冶職人で、しかもマーシャが褒めるほどの博識だと言う。
「それでパーティーに加入してくれるかい?」
「前回の話しい通り、パナケイア山に目的の人物、もしくは情報があれば正式に組んであげる」
ケーン・スネイクか、今でも住んでればいいが、彼に会わせる事が加入の条件だった。
『彼奴が医術の神の使いとはな…』
マーシャの話によると奴は人間達の間で医術の神の使いと呼ばれている、確かに奴の敵は病だけであり人間も関係ないと言っていたが………
たまに「新たな病と戦いに行く」とか言って、姿消してたけど人助けしてたとはな。
「3日後出発しよう、たいした魔物は居ないと思うが念のため色々買い足したい」
「わかったわ、二人共今日はゆっくり飲みましょ?」
マーシャは笑みを浮かべて酒を勧めた。
私は山中で野宿をしていた、自分の石灰の様な白い髪をかき上げながら起き上がる。
「要件は何だ?」
自分を見ていた男に声をかける、野盗の類だろうか?
「上玉じゃねぇか?楽しみが増えたな…」
三人の男の一人が下卑た笑みを浮べながらいう、残二人も、私が女であることを認識するとなめるように見てくる。
この男達の不幸は私を唯の女と認識したことだ。
私は金貨を数枚投げ捨てる。
「それを持って娼館にでも行きな……」
「巫山戯やがって!」
男たちは剣を抜く、一目見て私は呆れた。
剣の手入れがなってない死にたいのか?
「金貨では不満?……じゃあ首をもらうわ!」
私は自らの武器をとる、断頭台の刃そのものに持ち手をつけたような異様な武器、私達が作り上げた。
私は一瞬で距離を詰める、一度目の刃で男の首が飛ぶ。
「がぁぁ」
二度目は腹が立ったので剣を打ち砕き腹を割いた。
「武器を大切にしないからだ、武器に詫びろ」
敢えて即死させなかった、武器は予想通り一撃で砕け散る、真っ当な手入れであれば三撃はうけれたろう。
「一目見ればわかる……その剣も手入れさて無いな、私は職人だからね」
最後の一人に私は語りかける。
「助けてくれ!」
男は命乞をする、情けない。
「セット…」
「ひっ!」
私の言葉に怯え背を向け逃げ出した。
「リリース…」
私の言葉と同情に男の首と胴が離れ、血飛沫が舞う。
「断頭台から逃げられなかったな…」
予想通りの結末に私はため息をついた。
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