幕間 断頭台のメアリー
冒険者のなかでも世界に数名しかいないS級、
その中でも異質なのが断頭台のメアリーだった、S級で彼女のみが純粋な戦闘職ではなかった。
彼女の本職はホワイトスミス、金属加工職人であり商人だった。
製造職が冒険者をやることは珍しいものではない、アルケミストなどが自ら素材を採取することも当たり前にあった。
メアリーは平凡な職人であり商人、もともとC級冒険者、そんな彼女の人生が狂うのはとあるオークションにでたからだった。
そのオークションは革命により崩壊した、独裁国家から流れたものが競りに出されていた。
そんな中、彼女の目に断頭台――ギロチンがとまる。
『刃こぼれしてるな……私なら直せるな…』
ふとそんな事を考えてしまった、すると彼女の目から光が消え………
気が付くと彼女は自分工房に居た、目の前に断頭台の刃があった。
どうやって帰って来たか記憶がない。
「私のサインだ……」
手元にあった紙を見るとオークションの領収書だった、記憶がないがメアリー自身のサイン。
彼女は困惑する、そんな時断頭台の刃が光った。
彼女の頭の中に夥しい知識が流れ込んだ、断頭台で処刑された職人達の物だ、ただ、反対勢力の貴族に品物を納めただけで処刑されたもの、冤罪で処刑されたもの、志半ばで死んだ自分達の知識を後世に託したい、そんな些細な思いに彼女は潰される。
先人達の知恵と引き換えに、彼女の過去の記録と人格に歪みがしょうじた。
彼女はこの世ならざる者たちと共に断頭台の刃を
鍛え直した、処刑器具から両手持ちの武器に作り変えたのだ。
――呪われし武器ギロチン
――人間と人型を殺す事に特化し、相手の生命を吸収する、彼女本来の技量では作り得ない業物。
彼女はギロチンを作り上げたあと殺人衝動と焦燥感におそわれる事となる、早く何かを世に送り出さなればと処刑された職人達の思念に引き摺らる。
職人達の思いに応える多くの作品を作り、殺人衝動を抑える為に人型の魔物殺し続けた。
首をの無い魔物の死体の山……
そうしてホワイトスミスであった、彼女はいつしか、断頭台のメアリーと呼ばれる。
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