おねえさん
第1話
「おとうさん! おかあさん! おねがい。あけて」
ベランダのドアをたたきながら、わたしはそうさけんだ。しかし、おとうさんとおかあさんはもうねているのか、なにもはんのうがなかった。わたしはベランダのさくにもたれ、てをあわせてこすった。さむい。
「きみ。どうしたの?」
こえのほうにふりむくと、となりのへやのおねえさんがベランダでタバコをすっていた。
「おとうさんとおかあさんがドアをあけてくれないの」
「……そっか。ところで、そのかおのきずはどうしたの?」
「おとうさんになぐられたの」
「さむいでしょ。こんやはゆきがふるらしいからわたしのへやにはいりなよ」
おねえさんはそういうと、わたしをへやにいれてくれた。そして、スープをつくるとわたしのまえにおいた。
「わたしはひとみ。きみのなまえは?」
「ひまり」
「ひまりちゃんはいまなんなさいなの?」
「ひまりは7さい」
「いいたくなかったらいわなくていいんだけど、ひまりちゃんはどうしておとうさんになぐられて、ベランダにとじこめられたの?」
「わかんない。でも、おとうさんはおさけをのむといつもおこるの」
「おかあさんはたすけてくれないの?」
「おかあさんはおとうさんのことがこわいからひまりのことはたすけてくれない」
「そう。たいへんだったね」
おねえさんはそういうと、わたしをだきしめあたまをやさしくなでた。そして、こうたずねた。
「ひまりちゃんはおとうさんとおかあさんのことすき?」
「すきじゃない」
「じゃあ、わたしといっしょにおとうさんとおかあさんのことたいじしにいかない?」
「うん!」
おねえさんはカバンにほうちょうとガムテープをいれると、わたしといっしょにへやのそとにでた。おねえさんがわたしのいえのドアをあけ、なかにはいろうとしたがドアにはかぎがかかっていた。
「おねえさん、どうするの? これじゃ、なかにはいれないよ」
「だいじょうぶ」
おねえさんはまえがみをとめていたヘアピンをかぎあなにいれ、かぎをあけた。そして、わたしたちはおとうさんとおかあさんがねているへやにしのびこんだ。おねえさんはカバンをあけ、ガムテープでおとうさんのくちをふさぎ、てをしばった。それから、わたしにほうちょうをわたし、こういった。
「おとうさんのくびにほうちょうをさして」
「うん!」
さいしょはうまくささらなかったけど、なんかいもやるうちにほうちょうをおとうさんのくびにさせた。
「じょうずだね」
おねえさんはわたしのあたまをなで、そういった。そして、おかあさんのくびもおなじようさした。
「ひまりちゃんはいいこだね」
そういうと、またおねえさんがわたしのあたまをなでてくれた。わたしはそれがうれしくてうれしくてたまらなかった。
おねえさん @hanashiro_himeka
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