#6

夫婦がロッジに来てから、三週間ほどで食料はなくなった。俺一人なら二ヶ月過ごせる量の蓄えがあったが、三人で消費してしまうとあっという間だった。


ある好天の日にスーパーに行くことにした。

「買い出しに行こうと思うが、お前らはどうする?」

夫婦と俺は完全に生活リズムを確立して、お互い勝手に過ごしていた。食事のときは集まることが多かったが、勝手に向こうで食べているときもあった。

「行くよ。俺らもなんか買う」

「服欲しいかな」

意外なことに、二人は買い物についてきた。町は出歩けないのかと思っていた。


フォレスターの後部座席に二人を乗せる。

「あ、この車ってCD入る?」

「一応な」

「じゃあこれ聴こう」

そう言って女が後部座席から体を伸ばして、CD-ROMを入れた。女は二枚のCDをいつも持ち歩いていた。ART-SCHOOLの「Requiem for Innocence」と、Plastic Treeの初期のベスト盤。「Requiem for Innocence」はジャケットがニール・ヤングのオマージュになっていたので、

「これ、After the Gold Rushのオマージュだな」

と洋楽にすこし知識があるところを見せたら、「は?」という反応をもらっただけだった。Plastic TreeはRadioheadの「Fake Plastic Tree」からなんだろうかと思ったが、その話題が盛り上がる感じはしなかった。二組ともボーカルの歌が不安定という共通点があった。声量が足らない中性的なボーカルが、しっかりした演奏陣にかき消されそうになりながら歌っている。全然知らないバンドだったが、女がラジカセで再生するので、なんとなくは聴いていた。

「どっちだ?」

「アート」

俺が聞くと、そう答えた。ART-SCHOOLはアート、Plastic Treeはプラ、と呼ぶらしい。アートの方が疾走感があって、プラは独特の浮遊感があった。ギターが激しく鳴るイントロが流れる中、三人のドライブがはじまった。

駐車場を出て、山道をくだる。ここが一番危ない。舗装のない砂利道の上に雪が積もっていて、おまけに途中で段差がある。すこしスピードがついただけで、車体がひっくり返って、JAFを呼ぶことになる。それが嫌で、冬場はなるべく市街地に出ないような生活になった。

三人乗ってると、また運転感覚が違った。

「ここでちょっと体浮くぞ」

段差のところで、俺は二人に向かって忠告した。しかし車は段差でわずかに振動しただけで、一人のときのように浮き上がる感じがなかった。

「浮いたか?」

「すこし」

思ったほど浮かなくて、俺はバツが悪くなって黙った。よくよく思い出してみたら、このフォレスターを買ってから、人を乗せるのははじめてだった。

この辺りはさほど雪が降らない。降らないといっても、もちろん道内の中では、という注釈はいるが、とにかく比較的降らない。怖いのはその雪が凍ることだった。厳冬期は日中も氷点下が続くので、解けることがない。幸い、路面の凍結はすこしだけで、通行止めもなかった。

「なんで、CDこの二枚だけなんだ?」

「友達からもらったの」

「二枚だけ?」

「そう」

女はリュックを持ってきていて、その中にCDを入れていた。

「いつも持ち歩いてるのか?」

「そんなわけないでしょ」

じゃあなんで、と思ったが、よく見てみると、二人とも手荷物をしっかり持っている。いつでも逃げられるように、ということか、と一人納得した。

「同じアルバムばっかり聴いてて飽きないのか?」

「飽きてるけど、別に音楽好きじゃないから」

好きじゃない、という割にはしょっちゅう聴いていた。男の方はもっと音楽に興味がなさそうだった。

「今日ってどんぐらい買うの?」

「買えるだけ買いこみたいな」

本当なら毎回一人で買っている量の三倍買いたいところだが、二人の人間を乗せているので、そんなに荷物が乗らない。

「金出すよ」

「何言ってんだ」

金なんかないだろ、と思ったが、トートバッグの中から無造作に札束を何枚か取り出した。

「結構金あるんだよ。俺ら」

バッグミラー越しに五万ほどの札束を見せてきた。

「そんな金どこから……」

女の方が、あはは、と笑った。それだけで答えはなかった。


国道を走って、市街地のスーパーに着いた。日差しはあって、少しだけ暖かかった。三人で歩いていると、なんだか親戚の子供でも連れて歩いているような気持ちになる。ドアを開くと、店内から熱風が出てきた。今日も空調管理には失敗している。

この町、というかこの市で二十代の若者は珍しい。少子化といっても子供はなんだかでいる。しかしその子が大きくなると、故郷を離れないといけない。なぜなら雇用がないからだ。産業もない。かつては炭鉱で栄えて、石炭を掘り尽くしてしまうと、観光業でなんとかしようとして、なんともならなかった。札幌市まで行けば都会だし、自然と共に働きたいなら十勝で牧場をやるか、海沿いで漁師をやるか。一次産業がない田舎の町ほど悲惨なものはない。

男二人でそれぞれカートを押して、片っ端から食材を積んでいく。夫婦はすぐに日持ちしないものを取ろうとしたので、止めなければいけなかった。水などの飲み物は以前に買っていたので、食べ物を中心に買うことができた。いつも二往復していたのが、一往復で済んだ。客は少ないけれど、レジは並んでいた。客が少ないとレジの店員が減るので、結局待たされることになる。客が耐えられるギリギリを見計らっているかのような扱いだった。

「これ買ったら、次服屋行っていい?」

「そうだな。あ、その前に灯油を入れたい。容器が車にあるから、取ってこないといけないな」

「じゃあ、行ってこいよ。俺らが買っとくから。車の近くにカゴ置いとけばいいよな?」

「ああ、じゃあ、頼んだ」

俺は夫婦とわかれて、灯油を入れた。ロッジには電気の暖房と灯油ストーブと両方あるが、どうしても夜中は灯油ストーブがないと部屋が暖まりきらなかった。俺が灯油を車に積んで、スーパーに戻ったところで、カゴを押してくる夫婦と合流した。三人で荷物を車に積んだ。フォレスターの後部座席を片方倒して、なんとか押しこんだ。SUVのトランクというのはそんなに広くない。

「レクサスも持ってきたら、倍乗せられたな」

「俺、運転したくないよ。あんな道。死ぬって」

はは、と俺は笑った。


スーパーから少し離れたところに、ファストファッションの郊外タイプの店舗があった。本当にオシャレを気にするなら、札幌市まで行けばイオンモールがあったので、ブランドモノを買いたいならそっちだった。

「近くでいいよ。ただ新しい服が欲しいってだけだから」

女の方はその言葉通り、店で軽くサイズを合わせただけで、迷うこともなく五着ほど買った。そして男の方の服も同じぐらい。そして下着と靴下を買いこんでいた。思ったよりたくさん買ったが、特にこだわりはないようだった。

そのまま国道を目指して、途中にあった定食屋で遅めの昼飯を食べた。俺はカツ丼セットを頼んだ。外食はほとんどしないので、人がつくった飯というだけで美味い。小上がりのある、靴を脱いで座敷に座るタイプの店だった。子連れの団体客がいて、親と祖父母に囲まれた赤ん坊は終始ご機嫌だった。


帰りにパトロール中のパトカーとすれ違った。俺はすこし緊張したが、警察官はこちらをちらりと見た後ですぐに視線を戻した。バックミラーで夫婦の様子をうかがったが、平然としていた。

「警察に面は割れてないのか?」

「知らない。でもコソコソしてもムダでしょ」

女は髪先を指に巻きながら答えた。

「なあ、お前らには何があったんだ?」

すこしの間、沈黙が流れた。

「なんていうか、そんなに悪い奴には見えないんだ」

「色々あってな」

「色々、か」

男はそれ以上言葉を続けなかった。この話題はここまでか、と思った頃に、女の方が話し出した。

「人を殺したの」

「どうして?」

「理由?」

「あれは別に殺さなくても良かった」

男の方が言うと、女が笑った。

「あはは、そうかもね。でも私はそうして欲しかった。そして嬉しかった。リュウが私を選んでくれたことを」

この夫婦はどちらも説明がヘタだった。というよりは伝わらなくていい、と思っている喋り方だった。後ろ暗い過去だから大っぴらに喋りたくない気持ちもあるのだろう。

「私とリュウは結ばれるべきだった。それなのにリュウはどんどん私から離れていって、私も別の男と付き合わなければならなかった。全然好きじゃない彼氏だった。殴られたりはしなかったけど、後一歩って感じだったし。まあそれは男なら誰でもそんなもんなのかもしれない。男は、思い通りに行かなかったら、腕力でねじ伏せればいいと思ってる。私が別れたいって言ったときも散々ごねて、最後は近所の公園に来いって話になったの。向こうはお友達を二人連れてきてた。それもダサかった。女一人と話すのに三人がかりって。私はリュウを呼んで」

女は一方的に話した。

「そこで選んでもらったの。『くだらない日常に戻るか、このまま私と生きるか』って。そしたらリュウは私を選んでくれた。公園の彼氏とその仲間を返り討ちにしてくれた」

男は何も言わずに、窓の外を見ていた。どういう表情なのかよくわからなかった。

「仲間の一人が金属バット持ってて。まあある程度私が誰か呼ぶことを想定してたんだろうね。彼氏はもうその頃私のこと全然信用してなかったし」

「よく武器持ちの三人に勝てたな」

「そこは余裕。相手は別にヤンチャなだけで普通の大学生三人だし。一瞬で三人とも地べた。でもね、彼氏が『お前、絶対許さねえぞ。顔覚えたからな。絶対、絶対やり返してやる』って言ってきたの。私、怖くてえ」

女の表情に怯えの色はなかった。

「だからリュウが終わらせてくれたの」

「殺さなくても良かった」

「でも、そうしなかったら、もっとめんどくさかったかもよ?」

男はそれ以上反論しなかった。

「殺したのか。まさか、三人とも?」

「いや、さすがに彼氏だけだよ。バットで頭かち割った。本当に死んだかは確認してないけど、たぶん死んでる」

俺の質問に、男が答えた。

「残り二人は?」

「いつの間にか逃げてた」

「じゃあ、そいつらに通報されたのか」

「わかんね。俺らはそっからずっと逃げてる」

腑に落ちない点はいくつもあったが、ただ二人が嘘を言っていないことはわかった。

「まあ、事情はわかったよ。でも、なんで、お前はそいつを殺させたんだ?」

「殺させてないよ」

「えーと」

女は純真無垢そのものといった顔をしていた。

「殺そうとしたときにさ、止めようとはならなかったのか?」

「ならないよ。私もそうして欲しかったから」

「じゃあなんで、そうして欲しかったんだ?」

「ん」

まわりくどいやりとりになった。そして、女はすこし言葉を選んでから、

「そしたらリュウとずっと一緒にいられるから」

と言った。俺は「なんだこの女」と思った。


その夜はポトフとパンにしたが、二人には不評だった。俺も別にポトフは好きではなかった。ソーセージにじゃがいも、にんじん、玉ねぎ、ブロッコリーをつっこんで、ひたすら煮込む。味付けはコショウとコンソメ。「野菜の旨味がスープに出る」なんていうが、どうしてもコンソメしか入ってないので、味が薄く感じる。泥酔した次の日の朝に飲むと嬉しい味だが、夜の食事としてはパンチが足りない。

「この暖炉って使わないのか?」

男が部屋の暖炉に興味を持った。

「使えなくはないけど、まあ飾りだな。薪(たきぎ)を割らないといけなくてめんどくさいし」

「見てみたいな」

最後に暖炉に火が入ったのはいつだっただろう。レストランとして経営してた時代は、インテリアの一種として火を入れていた気がする。


翌日になって、まず煙突の掃除をした。暖炉にゴミ袋を固定しておく。そして脚立でロッジの屋根にのぼる。外は雪が舞っていた。すべらないように慎重に。煙突に専用のブラシをつっこむ。長年使ってないだけあって、煤はほとんどなかった。最近は煙突清掃の業者もいるらしいが、今頼む気にはなれなかった。

それから薪を斧で割った。この作業は男の方にも手伝ってもらった。定期的に業者に入ってもらって、山の木を伐採して、そのときに出た木材を屋外の薪小屋に置いている。すっかり乾いているが、形が悪いものばかりだった。まず俺が見本を見せる。自分で言うのもなんだが、俺の薪割りは、ビデオで撮って、薪割りの講習で使えるくらい上手いと思う。業者はすでに大雑把に原木をカットしてくれていたが、暖炉で使うには大きかった。形のいいものを見繕って、薪割り台として使っている丸太に置いた。大きな薪を垂直に立たせて、

「見てろ」

俺は両足を開いて、斧を額のすこし上くらいまで振り上げた。背伸びするような気持ちで背筋をまっすぐにする。そこから斧の刃の重さに引きずられるような感覚で振り下ろす。そして膝をしっかりと曲げる。背筋は伸ばしたまま。気持ちのいい、乾いた木の割れる音がして、薪が真っ二つになった。

「膝を使うんだ」

「もっと力入れた方がいいんじゃないか?」

「いや、力を入れると当たらなくなるんだ。斧をちゃんと当てれば、木は割れる。やってみろ。自分の足には絶対に当てるなよ」

男に斧を託して、俺は別の原木をセットした。

「いいぞ」

俺は危ないのですこし距離をとった。男は見よう見まねで斧を振り下ろした。

「あっ。当たってねえ」

振り下ろした斧は、薪台に突き刺さっていた。

「意外と当たらないもんだろ?」

刺さった斧を抜いてやりながら言った。一度薪をどかして、何度か素振りさせてみた。

「思った位置じゃない」

「まっすぐ振り下ろすだけなんだけど、意外とズレるんだ。ゴルフに近いな」

「やってことねーよ。斧ってここまで上げればいいのか?」

「いや、それは振りかぶりすぎだ。頭の上にいかないぐらいだな」

「この辺?」

「そう」

また振り下ろして、台の上で寸止め。今度は元々薪があった位置に来た。

「よし、じゃあもう一回やってみるか」

「いや、もうすこし練習する」

そう言って、何度も素振りを繰り返した。身体能力の高さは何度か目撃しているが、純粋な筋力だけなら俺の方が上だろう。こいつが優れているのは、肉体の使い方だった。人間の腕を使う動作で、より大きい力を発揮するには、結局足を使って地面からの反発力を生む必要がある。俺のように運動神経が悪く、筋肉だけ重くした人間が最も苦手なことだった。こいつが上手いのは、下半身と上半身の連動、そしてその再現性。

「よし、持ってきて」

俺は薪を置きなおして、距離を取る。男は斧を額のあたりまで上げる。そこから膝を使って、振り下ろす。すこし腕が遅れたが、それは誤差の範囲だった。斧が薪に突き刺さった。

「あれ、割れねえ」

「大丈夫。よくあることだ」

薪の真ん中ぐらいで刃は止まっていた。その状態で、もう一度斧を振り下ろして、薪を台に打ちつける。少しずつ刃を奥まで進めていって、最後は手で割ってしまう。

「力が足りないのかな」

「いや、木が悪かったのか、角度が悪かったのか。スパッと真っ二つになる方が珍しいから気にするな」

とは言いつつ、きれいに真っ二つに割りたい気持ちもわかるので、次の薪はもっと形の良い、割れやすそうなものを見繕った。

「そういえば、筋トレはしないのか?」

「ん、そうだな」

「敢えてしないのか?」

「いや、理由はないな。ただやらないってだけで」

最近の体育会系の若者は、俺たちの世代と違って、筋肉をつけることに変な抵抗はないはずだった。昔は筋肉をつけると背が伸びなくなるとか、動けなくなるとか、日本人の遺伝子は白人や黒人とは違うとか、よくわからない否定論があった。

「やってみたらいい」

「そうだな。いいから、次置いてくれよ」

「おう」

次の薪はきれいに真っ二つに割れた。


夜になった。俺はポトフが不評だったので、炒飯をつくった。それに中華スープを添えた。変に凝った料理じゃなくて、こういう子供が喜びそうなものばかり出してれば良いのだろうが、どうしても俺は色んなものを食べたいと思ってしまう。

二人が飯を食っている間に、俺は暖炉に火をつけた。外から持ってきた薪を並べて、その間にくしゃくしゃに丸めた古新聞紙を入れて、火種とする。その周りにいくらか細い枝を巻く。チャッカマンで火をつけて、火の広がりを注意深く見る。時間がかかるので、ビールを持ってきて、観察する。気づくと食卓にいた夫婦も寄ってきて三人で見守った。

「よし」

薪に火が燃え移って、安定した炎になった。最近の新しい暖炉だとガラス張りになっていて、煙が部屋に入ってこないようになっているモデルがあるが、このロッジの暖炉は昔ながらのつくりで、すこし部屋に煙が入ってくる。部屋が広いので、一酸化炭素中毒は気にしていないが、場合によっては換気しないといけない。

暖炉の火がパチパチと燃えるのを見ながら、夕食を食べた。テレビもつけず、特に会話もしなかった。二人は炒飯を喜んで食べて、男の方は二杯食べた。火を見ているのは落ち着く。自分の中にある原始的な感覚が、安心を覚えている気がする。

暖炉の火を見たい、と言った割には、二人はすぐに飽きてしまって、二階に行ったので、俺は一人で燃える火を眺めて、ちびちびとウィスキーを飲んだ。薪割りの疲れもあって、眠くなりながら、過去のことを反芻した。殺人夫婦が来てから、俺の生活は一変した。どうなることかと思っていたが、奇妙な均衡状態に達して、共同生活は安定に入っていた。それまで続いていた気が狂いそうな安定が奪われた代わりに、生活に刺激が追加された。ある意味では以前よりもいいのかもしれない。すくなくとも孤独感に苛まれることはなくなった。

俺の人生はもう残り少なくなった。そのことを悲しいと思う時期すらも過ぎた。おそらくはこのまま結婚せず、子供も残さずに死んでいくだろう。今の共同生活は、そんな俺に子供がいた場合の人生を体験させてくれている。俺自身の人生はさほど悪くなかった。努力もせず、才能もなく、何より人付き合いが下手な人間だったが、それでもなんとかやってきた。悪くなかった、と本気で思っている。それだけは胸を張って言える。それなのに、深夜に酒を飲んでいると、胸に穴があいたような、耐えがたい虚無感に襲われることがある。俺の人生には何の意味もなかったし、これからもそうだ。じゃあ今すぐに終わらせてしまえばいい、と自分の頭にライフルを向けることを考える。いや今なら夫婦が持っている拳銃がある。寝ている間に奪って、自分のこめかみに撃つ。

「はっ、はあ、はっ……」

そこまで想像して、胸の鼓動が激しくなって、息が苦しくなった。汗が出てきて、体の筋肉がこわばる。死ぬことは怖い。コップに残っていたウィスキーを一気飲みする。夜に襲いかかってくる魔物は、長年酒の力を使って追い返してきた。ただそれも丁半博打になってきて、酔って楽しい気持ちになることもあれば、更に深く沈みこんでしまうこともあった。どちらに転ぶか、その決め手はもう俺の中で結論が出ている。「適度に酔っているときは楽しく、飲み過ぎたときは絶望が押し寄せてくる」というのが分析結果だ。しょうもない。


孤独な生活で長生きするコツは、とにかく自分と向き合う時間を最低限にすることだ。


(続)

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