雉のゆりかご

あしはらあだこ

第1話

 う~ん。こない。ぜっんぜんこない。

 こうなったら、わたくしがお迎えに参りましょう。

 キジは、出会うはずの場所から飛び立った。


 あら?

 あれは、女神様ではないかしらん?

 なんだか、慌てているご様子。

 え?

 やあ~っと桃太郎のご到着?

 でも、女神様・・・へ?

 あの、庭に放り出されたのって・・・

 えぇ~~~!!!

 桃の種?!!!

 あ、あぁ、おばあさん桃太郎をたべちゃった!!!

 大変だ~~~!!!


 こ、これは、知らせに行かないと・・・

 で、でも誰に?どこへ?

 あぁ、なんか暑くてクラクラするし、飛べども飛べども着きゃしない・・・

 太陽がわたくしをおかしくする・・・


 と、フッと突然、身がかろやかになりスイスイと空を飛べるようになった。

 なんだったのでしょう、今のは・・・?

 でも、なんだか、いつもより高いところを飛んでいる気がするのよ。

 それでも、全然いきが苦しくない。

 わたくしは、いつの間にか、こんなに能力が上がったの?

 でも、楽しいな。このまま、飛べるところまで、飛んでみよう。


 わぁ、ヒノモト全体が見える。

 こんなに複雑なかたちをしていたなんて・・・

 あれが、海?

 陽を受けて、なんてきれいなんでしょう。

 なんだか、このもやもやしたものは・・・ひょっとして雲?

 えぇ?雲の上に、もっと暗い空が広がっている・・・

 これは、ほんとのこと?それとも・・・

 これが、天国?

 にしては、神様も、霊魂もいないけど・・・

 でも、なんだか、不思議と怖くないし、もっと行けるところまで行ってみたい!!!


 一番近い星に到着。

 なんだか、うさぎみたいなのがいっぱいいる。

 ん?もちつき?

 え?ここって、月?うそお~・・・

 と、改めて、振り返ると、そこには青い色した大きなほしが。

 思わず見とれていると

「どうだ?瑠璃のほしは?」

 え?と思ってみると、お姫様?かぐや姫?

「そう、わたくしが、かぐやである」

 と、キジの心を読んだかのように答える。

「る、瑠璃のほしとは?」

「おまえの住む、ヒノモトが存在するほしを、わたくしは、瑠璃のほしと呼んでおる」

 はぁ~、それにしても噂にたがわぬ美しいひとだなぁ。

「ふ。だからこそ帝にも求愛されたのだ」

 ま、まあそうか・・・

「そろそろ、帰らなくてよいのか。ここの時間は、瑠璃のほしのそれとはちがうぞ・・・」

 え・・・それって、昔話にありがちな、いつの間にか、百年が経っていたとか・・・?

「帰る手はずは、整って居る。案ずるな。あの光に包まれるだけ。さあ。」

 あ。と思った時には、光の中にいて、なんだか心地よかった。

 お母さんの羽根の下にいるみたいだ・・・すごく安心する。

 すると、なにやら、声がしてゆすぶり起こされた。


 あ!女神様。わたくしは、どうしていたのでしょう・・・

(キジよ。聞きなさい。今、このせかいは大変なことになっている。そなたを頼みとしておる。わしからそなたに、特別に力を授ける。いざという時に、このせかいの、平和を願うだけでよい。本人たちが、本気で願わないと、使えない力なのだ。よいな)

 といい終わると、問いかける間もなく消えてしまった。

 ほんとに、わたくしにそのような力が?

 いつ使うの?

 夢うつつの頭がはっきりしないまま、キジは昼間の月を見上げるのだった。


                    つづく・・・かどうかはわからない


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雉のゆりかご あしはらあだこ @ashiharaadako

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