バケネコ猫のビビの嘘
平木明日香
プロローグ
冷え込んだ冬の空の下で、誰かが呼んでいる声が聞こえた。
ぎこちない運びをする2本の足に、透き通った声色。
私と明が出会った日だ。
私が明の姿に化けるきっかけとなった日、それは私にとって今も消えない大切な思い出となっている。
あの頃の私たちは毎日が幸せだった。母の日に内緒で買いに行ったカーネーション。学校に行けない日にやり込んだ「どうぶつの森」。家族の前では強がっていたくせに、部屋に帰った途端に泣いた夜。どこに行くにも一緒だった明が、私に言っていたこと。「家族のことをよろしく頼む」って。
眠れない日に目が覚めて、机の上に座ってノートを開く。「生きているうちにやりたいこと」と題された明のノート。途中までしか書かれていない箇条書きされたたくさんの夢の中に、一際大きく書かれた文字がある。
「助けてくれた家族に、いつか恩返しがしたい」
走り書きされたこの1つの願いを、私は今でも夢見ている。いつか明の望んだ未来が来るように、私にできることはなにかを探して。
バケネコ猫のビビの嘘 平木明日香 @4963251
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