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平木明日香

星の子と呼ばれる子供たち



 駆ける。



 それは風のように涼やかな音を含んでいた。



 少女は少年を探していた。



 彼女は少年の“影”だった。



 まだ、「魔法」がこの世界に存在していた時代、そのはるか先の時間に、紡がれていた糸があった。



 彼女は「魔法使い」だ。



 かつて、世界を支配していた竜族との戦争に仕われていた、勇敢な戦士族の末裔だった。



 人々は数多の軍隊を率い、竜族との戦争に勝利した。



 あの日から人々は、「魔法」と、「真実」を失った。



 平和と引き換えに太陽を失ったのだ。



 空を覆い尽くす青。



 成層圏の向こう側にある光。



 その彼方にある、——“未来”を。




 少年は竜族の末裔だった。



 かつて世界を混沌に陥れていた悪しき魔物の血族だった。



 ——同時に、彼は人間の子でもあった。



 はるか昔、戦争が終結する前の世界で、ともに歩んでいける世界が来ることを願っていた、——“竜と人”との。

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