終幕

「ここは……?長い夢から覚めたような感覚だ」

「貴方は前世に乗っ取られていたんです。そして全人類に力を与え、自分の戦いでもその力を使っていました」

「前、世?そんな……だが、君の目を見ると真実なのだと分かるよ。僕に出来る償いはなんでもしよう」


 男はそう言った。

 けれど、私は思っていることを伝える。


「貴方と前世は違います。ですが、出来るのであれば能力を使えなくしてください」

「出来るか分からないが、やってみるよ」


 その瞬間、光に包まれた。

 それが消えると身体が軽くなったという声がしてきた。


「凛、能力が使えなくなったわ」

「成功のようです。ありがとうございます」

「感謝しないでくれ。僕の償いなのだから」

「そうですか。きっと、自分で思っているよりも疲れていると思うので早く帰って安静にしてください」


 そうして男は去っていった。


「あんなあっさり帰らせて良かったのか?」

「彼がこの世を騒がせた人物の【今】だとしても、彼自体に罪はないからな」

「オレも同意見だよ」

「さすが七代目!お優しい‼︎」


 赤司の性格が随分変わっているな。

 倉田と話すとああなるのだろうか?


『凛ちゃん、能力を持っている人がまだいるみたいなの。それに、その人がまた悪いことをしてしまうかもしれないって、ヨチが……」


「なに⁈」


 私は思わず声に出してしまった。


「急にどうしたの?」

「千緒がまだ能力を持っている人がいると……」

「なくなったわけやなかったんか?」


 私も先程までそう思っていた。

 だが、違った。

 また誰かが、襲われるかもしれないという可能性が出てきてしまった。


「もし、なにかあったら今度はオレが止めに行くよ。だからさ、ついてきてくれる?」


 これが、組長倉田の姿なのだろう。

 凛々しい目つきで私達を見ている。


「「「当たり前だ!(です‼︎)」」」

「強い相手と戦えるんやったらな」

「もちろん!ウチ戦えないですけど!」

「私も行くわ。凛は?」


 怜が私に問いかけた。

 答えはすでに決まっている。


「『もちろんついて行くさ(よ)!どこまでも‼︎』」


 私達は誓う。

 仲間と共に駆け抜け、どんな困難にだって立ち向かってみせると。

 どんな人だって救ってみせると。


 この青くて広い、空の下で——

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前世混戦 ぷりん @HLnAu

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