決闘
「さあ、やろうか」
「お望み通りいきますよ!
「そんなのボクには効かないよ〜」
バリアが貼られて防がれた。
「それは囮ですよ」
その間に、奴の後ろに回っていた師匠が攻撃を繰り出す。
「背後、もらったで!」
奴の背中にトンファーが強く当たった。
「さっきのから武器取っといて良かったなあ」
「取ってきてたんですか?」
「やって、置かれとったしええかなと思ったんよ」
それで奴を倒すことが出来たのなら何も言えぬな。
倒したと思っていた。
だが、奴の声がした。
「うう、やってくれたね……でもボクはまだ戦えるよ!」
「なんやまだ楽しめそうやなあ。そや、笠野これ貸したるわ」
そう言って私に短刀を渡してくれた。
「使わせていただきます!」
矢桐がトランプで錯乱させて、私と師匠が怜の壁を駆使しながら進んでいく。
そして、私が短刀で奴のバリアにひびを入れる。
その奥からきていた師匠のトンファーで、バリアごと奴を気絶させようとした。
けれど、それは手で防がれた。
「そう何度も同じ手は喰らわないよ」
「そやけど、その手にもダメージいったんとちゃう?」
「別に、こんなの治してもらうし」
奴は回復を出来る人を呼び、治してもらっていた。
「よしっ、これで大丈夫だよ〜」
私達は一度奴から離れて集まった。
「あいつ、回復するんですね?」
「そうみたいやなあ。倒し甲斐あるやんけ」
「イキイキするものではないと思うわ……」
「だが、奴を倒さねば皆が解放されない。だから、行くぞ!」
私達は覚悟を決め、再び対峙した。
「何回来ても変わらないのになあ」
奴がそう言った瞬間、私達は動き出した。
「同じだと思わないでほしいわね!
怜の壁で潰して身動きをとれなくして、それに畳みかけるように矢桐のトランプで風を起こした。
そして、師匠がバリアを出される前にトンファーで奴を飛ばして最後に私が短刀を顔の側で止める。
「あーあ。動かない方が身のためってことかな」
「そうだ。だが、お前は何故最初の怜の攻撃を避けなかった?一度避ける素振りをしていただろう?」
「そうだねえ。協力して戦う君らを見てたらなんかバカバカしくなっちゃったんだよね〜ボクがこんなことしてなかったら今頃ボクの【今】も楽しかったのかなあ、なんて。ボクが乗っ取っちゃったからさ〜だから君の力で戻してよ」
奴がそういうものだから、少し情けをかけたくなってしまう。
だが、【今】を助けるためにも、私はしなければならないことがある。
「もちろんそうするさ。最後に君の名前を聞かせてくれないか?」
「ボクは
彼の頬に涙が流れた気がした。
私は短刀をおろし、彼に触れる。
—千緒、いくぞ。
「『汝の魂を【前】へ【前】の魂を汝へ。混ざり合って一つの魂へ。
彼の姿が変わった。
その瞬間、空間にくる前にいた場所に戻った。
先程まであの場所にいた人達の催眠が解けていて、自由に身体が動かせるようになっていた。
喜ぶ声が響いている。
私達は勝った、のか?
『凛ちゃん。ヨシくんと話したいな』
—分かったから、そんな怖い顔をするな。
私は近くにいた倉田の【今】に話しかける。
「すまない、少しいいか?」
「はい。ヨシくんに用、ですよね?代わりますね」
彼女は三回瞬きをした。
「君は……ち、千緒ちゃん?」
「倉田も見ただけで分かるのだな。千緒が話したいと言っておる。怒っているようだから、覚悟しておくのだぞ」
「千緒ちゃんが……えっ、オレ怒られるの⁈」
—千緒、ほどほどにな。
『ごめん、無理かも』
これは相当怒っているようだな。
まあ、心配させた倉田も悪いか。
「『ねえ、ヨシくん?あれだけ自分を犠牲にするなって言ったのになんで、なんで逃げろって言ったの⁈【前】、オレは一人じゃダメなんだって言ってたじゃない‼︎また失っちゃうかと思って怖かったんだからね!もうしないでよ……あんなの……』」
私の身体で千緒が啜り泣く。
「ごめん。ごめんね、千緒ちゃん。もうしないから……」
と、倉田が頭を撫でてきた。
内側から見ていると少し恥ずかしくなってくる。
「倉田、離してくれるか?」
「うぇっ、あっ、す、すみません!」
「何故敬語なのだ?それと、名乗っていなかったな。私は笠野凛だ」
「かしゃ、笠野さん、大人っぽいから……」
こんなに威圧を感じさせない男がヤクザのトップとはな。
さすがに驚くものだ。
「そんなことは気にせずタメ口で良い」
「はい、じゃなくて、うん!」
なんだかチワワみたいだな。
話していたら
「七代目!」「ヨシー!」「倉田‼︎」
と、三人が来た。
そして、倉田がもみくちゃにされた。
「ちょっ、ちょっと待って!
そう言いつつ嬉しそうな様子を見ていると、微笑ましい気持ちになってくる。
—良かったな千緒。泣き止んだか?
『うん。ごめんね……』
—気にするでない。
私はこの戦いに協力してくれた怜達のところへ行った。
「怜、師匠、愛川!」
「そんなに急いでどうしたの?」
「どしたん?」
「どうしたんですか?」
「礼を言いたくてだな」
三人は顔を見合わせて笑った。
「友達を手伝うのは当たり前じゃない」
「ワシは強いのと戦いたかっただけや」
「ウチは何もしてないんで!彼は、利害が一致しただけだって言って、さっき寝ましたよ」
私は改めて仲間に恵まれたなと思う。
それから話していると、意識を失っていた人が目を開けた。
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