最終
黒幕
「それはね、ボクだよ〜こうして姿を見せるのは初めてだね。ボクの空間へようこそ」
真っ暗で何もない空間。
そこには何段もある階段の頂点で椅子に立っている一人の男がいる。
私はそいつに対して、憎悪の感情しか湧いてこない。
「お前がクウ、か。空間とはなんだ?何故、私を連れてきた」
「空間ってのはね、ボクが催眠で操っている子に作ってもらったんだ〜それとね、連れてきたのは君だけじゃないよ〜」
周りを見ると怜や忍、愛川、千石、黛先生、それに師匠もいた。
全て、私と関わった人達だ……
「何故、皆まで連れてきた。お前の目的はなんだ?自分勝手で動いているのであれば、私はお前を許すことは出来ない」
「別に君に許されなくたっていいよ。ボクの最初の目的は叶ったからね」
男はパチンっと指を鳴らす。
すると、椅子に縛り付けられて、口にガムテープを貼られている女の子が出てきた。
「この子が君達が探していた、倉田慶喜くんの【今】だよ」
「なん、だと?」
周りから「嘘だろ?」「そんな……」「また七代目を守れなかった……」
などなどのことが聞こえてくる。
「来なかったら君達を傷つけるよって言ったらすぐだったんだよね〜やっぱ昔の仲間には弱いのかな?そうじゃない子もいるけどね」
そう言ってから縛っている子のガムテープを取った。
「ぷはっ、皆さん逃げて!私とヨシくんは平気ですから‼︎」
「だが、君を置いて逃げるなど……」
「正義感なんてどっかに置いてこいよ!自分一人でどうにかするから!オレのことなんか放っとけ‼︎」
きっと今喋ったのが、倉田なのだろう。
—君が言っていた通り、自分を犠牲にしようとする人なのだな。
『うん、ああいうところ全然変わってないんだから!』
千緒はとても怒っている様子だ。
そうなるのも少し分かるけれどな。
「あのさあ、逃げろって言うけどボクが逃すわけないじゃん。操ってる子だっていっぱいいるんだし」
私達の前には沢山の人が並んでいる。
並んでいる人の目からは、涙が流れているようにも見える。
「やっちゃってね〜
奴が指を鳴らすと、一斉に動き出した。
それぞれ囲まれた。
私が囲まれた人達は泣いていて
「いやだ、攻撃したくない」「人を傷つけたくない……」「殺さないで……」
苦しそうにしている。
こんなに辛そうにしている人達を倒すことなど出来ない。
周りを見ると、皆も苦戦しているようだった。
「あれ?みんなどうしちゃったの?攻撃しないと倒せないよ?あっ、そっかお人好しだから出来ないんだね〜」
奴はクスクスと笑っている。
「悪趣味な奴め……」
「あはっ、そーだよ。せっかくだし、これも言っちゃおうかな。実は君の両親が亡くなったのは、ボクが催眠で操ってそれぞれに致命傷を負わせたからなんだよね」
その事実を聞かされた私は膝から崩れ落ちた。
「だから、ボクを責めるのはお門違いってやつだよ」
私が恨んでいたのは間違っていたのか?いや、だが、能力を使ったのはあいつで……
考えがまとまらない……私はそんなことを考えて座り込んだ。
そして、攻撃を喰らいそうになる。
(このまま、母達と同じ場所に行けるなら)
そう思っていたら、私への攻撃が弾かれた。
「あんさんなに座り込んでんのや?助けたいんやろ?守りたいんやろ⁈せやったら早よ立たんかい!このアホ弟子‼︎」
師匠……よく見ると、先程師匠が戦っていた人達は急所を避け眠らされているようであった。
私は立ち上がった。
「師匠、おかげで目が覚めました。私、やはり奴を責めるのは間違っていないと思うんです。結果がどうであれ、きっかけをつくったのは奴だから」
「その意気や。自分の譲れんもん守るために戦ってこい!」
彼は忍達の方を向いて声を出す。
「あんさんらも、自分自身の奪われたくない、失いたくないって思うもんのために戦うんや!一つぐらいあるやろ?自分の誇りが‼︎」
皆はその言葉を聞いて覚醒したかのように強くなった。
「「「オレ(俺)達の譲れねえもんはヨシ(倉田)(七代目)だ‼︎」」」
三人は声を合わせて言った。
そして、囲まれていた人達に危害を加えないように倒していく。
「私は友達の大切な人を助けたい!」
怜は新しい能力の使い方として、壁を作ってから、それを人の上にのせて動けなくしていた。
「重くないから問題なしよ」
それならいい、のか?
「なんか彼、僕に似ていて嫌なんですよね……」
愛川、いや、矢桐織はトランプを回転させて周りに放ち身動きをとれないようにした。
「これで全員の動きは封じたぞ。その子を解放しろ!」
「なに言ってるのさ、ここからが始まりだよ?」
奴は女の子を解放した。
そう思ったが
「
と、彼女に向かって能力を使った。
「さあ、慶喜くん。かつての仲間を倒してきてね」
瞬間、オレンジ色の光が私の間を駆けた。
「類、刀真、勇気さん。オレは貴方達を傷つけたくない。でも、止められない。だから、力づくで止めてください」
「ああ、任せろ!」
「
そこからは、光を発した拳が繰り出されていた。
時々蹴りも交えながらな。
その時、戦っていた千石から呼ばれた。
「笠野!ヨシはオレらがなんとかするから、お前はあのクウって奴んとこに行け‼︎」
「ああ、そちらは頼んだ!」
私は奴のいるところへ駆け出した。
後ろから走る音が聞こえる。
「ワシも行くで。その相手、強いんやろ?」
「私もよ。凛を一人にはしないわ」
「仕方ないですから、僕も行って差し上げますよ」
「みんな……感謝する」
こんなにも心強い仲間、そして敵だったというのに共に闘ってくれるというのだ。
なんとしてでも、私は奴に負けたくない。
そうして、奴がいる階段の下まで来た。
奴は余裕そうにしている。
だが、私達が来たのが分かると椅子から立ち、降りてきた。
戦う意思を見せたということだ。
ここからが、私達の戦いとなる。
必ず勝つ。そう決めた。
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