最終話 【完結】現代日本での生活
■
元の世界に帰りますか?
・はい
・いいえ
迷いなく俺たちは、『はい』を選んだ。
気づくと、俺たち(俺、エリサ、高田、沙織、ハヤハヤ)は何もない真っ白な空間に立っていた。俺が異世界に転移する前に、元女神のエリサと初めて会ったのと同じような場所だった。
俺たちの前に、一人の女性がいた。外見は人間なら40歳くらいに見える。エリサが以前着ていた、ギリシャ神話にでてくるような、ゆったりとした白い服を着ていた。
「天界に戻ってきた?」
沙織が言った。
「こ、これは……。リ……、リージル先輩。お久しぶりですっ!」
エリサがガチガチに硬直して、腰を直角以上に曲げ、頭を下げまくる。
「エリサさん、お久しぶりですね」
「はっ、はいっ! ご無沙汰しておりますっ! リージル先輩」
エリサが再び、頭を下げまぐる。よっぽど怖い先輩らしい。
「わたしは、担当の女神リージルです」
リージルと名乗った女神は、ゆっくりと俺たちを見渡した。「みなさん、魔王討伐、本当によくやってくれました。みごとでしたよ。これで、世界の
なんか、よくわからんが、俺たちは、すごいことをやったらしい。
「そこで、ご褒美として、あなたたちの願いを、それぞれ一人につき、ひとつづつ
「え、なんでもいいの?」
高田が目を輝かせて言う。
「もちろん、神といえど、どんな願いでも叶えることは不可能です。でも、できる限りのことは対応させていただきます。何がいいですか?」
リージルがニッコリ笑って言う。
「うーん、やっぱりお金かなぁ……」
高田が現実的なことを言う。まあ、たしかに俺も同意見だ。
「わしは、旦那さまのお嫁さんがいいのじゃ!」
まだ背が低いハヤハヤが、俺の腰に抱きつきながら叫んだ。
「あ、わたしもそれがいいです!」
すかさず、エリサが続けた。
「わたしもそれがいいー!」
と沙織。
「あー、みんなずるい。じゃあ、あたしもそれでぇー!」
高田が願いをいい直した。
「おいおい、無茶なこと言うな。現代日本じゃ、重婚は法律で禁止されてるんだぞ」
俺が、肩をすくめた。
「大丈夫です」
女神リージルが言った。
「え?」
「そこは、神の力。それくらいなら、なんとかなります」
なんとかなってしまうのかよ。
「では丸田さんは、何を望みますか?」
「え、俺?」
うーん……。
「嫁が4人もできたら、
「わかりました。では、手配しておきますね。あと、服装も転移前のものにもどしておきますね。エリサとハヤハヤちゃんは、現代日本でもおかしくないような服にしておきますので……。では、みなさん、よき人生を……」
リージルが言うと、再び俺たちは意識を失った。
☆☆☆
気づくと、オフィス街の歩道にいた。歩道に沿った5車線の大通りでは、普通に自動車が走っている。転生前、俺たちにトラックがつっこんでくる寸前の風景だった。
転移前とまったく同じように、スマホがスーツのポケットに入っていた。取り出して画面を見る。時刻も日付も、俺たちが転生する寸前の時間だった。
俺、高田、沙織は、転移前そのままの服装だった。どうやら、完全に転生前に戻っている。
つけ加えれば、エリサはしゃれたグレーのワンピース。ハヤハヤは、いかにも小学生の女の子が着そうなフレアのミニスカート姿で、俺たちのすぐそばにいた。
「完全に戻った?」
セーラー服姿の沙織が言った。
「どうやら、そのようだな」
エリサやハヤハヤがいる以外は、完全に転移前だ。
いや、ひとつだけ違ったことがあった……。
そこに大城の姿だけがなかった。
☆☆☆
で、後日談だ。
女神が言ったとおり、俺は嫁がいきなり4人もできてしまった。重婚じゃねえか、と思うのだが、そこは神のわけのわからん力が働いているようだ。
俺が住んでいたワンルームは、さすがに5人で暮らすには手狭なので、広い高級マンションに引っ越した。金はいくらでもあった。
確認すれば、エリサとハヤハヤは、夫である俺の戸籍に入っていた。もちろん、高田や沙織も、俺の妻として戸籍に入っていた。
今では、エリサは我が家の主婦をしている。高田はOLを続け、沙織は高校に通っていた。ハヤハヤも小学6年生として小学校に通っている。
俺は結局、会社をやめた。今では、家でネットとゲームざんまいだ。
残念ながらエロゲはやめてしまった。毎晩、美少女嫁たちに夜の生活をせがまれ、
俺の預金通帳を見るとヤバかった。貯金額は114兆3812億円……
国家予算じゃねえか。いくらなんでも限度があるだろ。
一生豪遊しても使いきれない額だ。
あと、ひとつヤバイことがあった。
俺たち5人は、異世界で使っていた能力が、そのままこっちの世界でも使えた。
魔王を倒したときにつかった、女神フローラと、女神サテアの2対の剣でさえ、俺は召喚することができた。
ひょっとして、俺たち5人パーティが本気だせば世界征服できるかもしれない。
まあ、やらんがな……
「ただいま、なのじゃ!」
玄関が、いきおいよく開く音がして、ハヤハヤの声がした。
「あ、ハヤハヤちゃん、おかえりなさい」
奥で家事をやっていたエリサの声もした。
ダダダ……と廊下を走ってくる音。
「ハヤハヤちゃん、廊下を走ったら危ないよ」
「旦那さまーっ。ただいまなのじゃーっ!」
PCを見ていた俺がいる部屋に、赤いランドセルを担いだハヤハヤが飛び込んでくる。
「帰ってきたのじゃーっ!」
ハヤハヤが俺に抱きついてきた。
「おかえり」
俺は、満面の笑顔でハヤハヤを抱きしめた……
(おわり)
――――――――――――――――――――
《あとがき》
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
筆者にとって、これがはじめてのWeb小説となります。まずは約10万字で完結させるのが目標でした。なんとか達成できてよかったです。
よかったら、新作のほうも見ていただけるとうれしいです。
はずれスキル『ニコポ』で無双~オッサンの異世界転移、勇者パーティを追放されたけど、まったくノーダメージでした~ 眞田幸有 @yukisanada
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