第9話 カラーエデンズでの最初の朝の目覚め
『ウィレム様、ウィレム様。起きてください』
「…………ん、うぅ」
身体を捻らせて、ベットで体を起こす。
頭の中に響くその声を反芻させながら、周囲を見渡した。
白色の漆喰の壁ではなく木造の壁と床。お気に入りのボトルシップが置かれているはずの机はなく、お気に入りの童話や小説が置いてあるはずの本棚にはないもない。
……私の部屋じゃない。青色の淡い輝きを放つ蝶なんて、私の知る現実には、無い存在だ。
……一度眠ってしまったら、実はシェイレブさんたちと出会ったのが夢になったりするのではないかと、ほんの少しの期待は崩れ去られた。
自分は目を擦りながら、モニカさんに挨拶する。
「モニカさん、おはようございます」
『おはようございます。ウィレム様、朝食の準備はできていますから着替えましょう』
「はい、わかりました」
自分は昨日魔女様に用意された服に着替える。
お風呂に入った後にソックスガーターの履き方は覚えたから大体は大丈夫だ。
服を着替え終えると、扉のノックの音が響く。
「稚魚ちゃーん、起きたー?」
「はい、今行きます」
ウィレムはドアノブに触れてシェイレブと合流する。
二人と一匹は一階のリビングへと向かった。
◇ ◇ ◇
「おはようございます、ウィレムさん」
「おはようございます、シェラードさん。魔女様も、おはようございます」
シェラードさんはエプロンを付けて鍋をお玉でかき混ぜていた。
魔女様は既に席についており、料理はテーブルに並べられていた。
「……ん、おはよう」
「それじゃ、稚魚ちゃんは昨日と同じ席でいい?」
「あ、はい」
「どーぞ」
シェイレブさんは昨日私が座った席を軽く引いて、自分に座るよう促す。
自分は座ると、シェイレブさんはシェラードさんの方に歩いて行った。
「……寝られたのかい」
「は、はい。大丈夫です」
コトリ、と皿がシェイレブさんたちが並べられていく中、魔女様は私に質問する。
シェイレブさんが横から皿を置いたので、ありがとうございます、と言うとにっこりとどーいたしまして、と笑った。
シェイレブさんとシェラードさんが席について、並べられた今日の料理を見る。
並べられた料理はバターが置かれたトースト、トマトとレタスのサラダ、スクランブルエッグ、コーンスープとレモン水……か。
どれもおいしそうで、自分の家は和食ばかりだったからあまり朝食では食べることができなかった料理の数々に、唾を飲む。
「それとお前」
「? わ、私ですか?」
「食事が終わった後、聞きたいことがある」
「……? わ、わかりました」
魔女様の言葉に自分は頷く。
一体、何の話をされるんだろう? ……ちょっと怖いけど、今は食事だ。
「それじゃ、食べよう」
「「はい、魔女様」」
魔女様のその宣言を聞いた二人は食事を開始した。
自分も魔女様の言葉につられ、私は両手を合わせた。
「……いただきます」
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