無様な灰被り(上) 23

 王とは民草たみくさと全く異なる者である。


 この地をべるべく、神によって選ばれた存在。


 ――そう信じられていた。

 

 敬虔けいけんな祈りを捧げて王の体に触れれば、病も傷も神秘の力によって、たちどころに癒される。


 ――そう信じられていた。

 

 王への冒涜ぼうとくは神への冒涜に等しく、呪い、汚そうとするものは速やかに神罰しんばつを受ける。


 ――そう信じられていた。

 

 王は人々の崇敬すうけいの対象であり――、そして畏怖いふの対象であった。


 ――故に、「それ」はその姿を取った。


 魁偉かいいなる容貌ようぼう


 颯爽さっそうまたがる馬の筋骨きんこつ隆々りゅうりゅうたるもの。


 腰には巨大なつるぎき、額にはかんむりいかめしい。


 まごうことなく王者の身形みなりだった。

 

 まごうことなく王者の顔つきだった。


 まごうことなく王者の風格だった。


 ――「それ」は人々の恐怖でり上げられていた。

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