無様な灰被り(上) 11
「一応言って置くけど、ああいう貴族は皆無じゃないよ?
「だった」と、仕立て屋が過去形で言うのが、僕には気になった。
けれど、そのことに
「それにしてもあんな言葉がすらすら出て来るなんて、
仕立て屋は自信に満ちた様子でそう言ったけど、「家族」という言葉を口にした時、少しだけ表情が
そして僕は僕で、仕立て屋の言葉に完全に安心することも出来なくて、
「……うん、だと良いけど」
「っと、先のことを考えないように言ったのは私だったね。ごめん。とりあえず、今はここでゆっくりできてることを喜ぼう」
そう言って、仕立て屋は納屋の壁に寄り掛かった。
そうして、ちょっと話題を変えた。
「それにしても、思い出せる一番初めの記憶が裸で街道にいたことで、その後すぐに死体を見つけた、なんて、君も災難だったね?」
村への道中で、僕はごく簡単に、服を盗んで逃げだすまでの事情を話していた。
「うん。でも何で僕、裸だったんだろう?」
「多分襲われて身ぐるみ
僕は
「野盗……っていうのかな? そういう人達は、盗るものを盗ったら、大人しく帰すのが普通?」
仕立て屋も、自分で言っていて奇妙には思っていたらしく、
「まあ、確かに変ではあるよ。聞いた話だけど、ああいう手合いは荒っぽいから、さっさと――あー、始末をしたり。それでなくともどこかに売っぱらったり、それから君みたいな良い家の子みたいなのなら、
「捕まってたけど必死で逃げた?」
「でも君の足、その時はまだ綺麗なままだったんでしょう?」
「確かに」と、僕は言った。
そうして考え込んでいたけど、その段階で「別の世界から渡って来た」なんて答えに辿り着ける訳がなかった。
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