無様な灰被り(上) 6
死に物狂いで走るうちに、盗んだ靴は直ぐに脱げた。
けれど走る勢いを落とさなかったから、僕の足はいつしか傷だらけになっていた。
だから一旦足を止めて落ち着くと、遅れてやってきた痛みに、もう一歩も歩くことができなかった。
僕は荒い息を
「……どうして逃げちゃったんだろう? 助けてくれたかもしれないのに」
男の口調を思い出しつつ、僕はそう独り
そして、今自分が着ている服を見て、
「……まあ、泥棒してるところも見られたしね。やっぱり盗みはよくない」
僕は自分の顔を指で
「……寂しくて、不安? だろうね」
まるで
考えなければいけないことは山ほどあった筈だけれど、それを考えるのも
僕はそのまま、いつの間にか眠ってしまったらしい。
夢を見ていたような気がするけど、その内容は覚えていない。
酷く気が滅入るような夢で、
「―――、―――、――――――?」
僕を現実に引き戻したのは、頬を軽く叩く感触と、発せられる声だった。
さっきの男じゃなくて、若い女の声。
夢から覚め、
それが「仕立て屋」との出会いだった。
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