第16話 助太刀

Hello,world どうやら僕たちは、はめられてしまったようだ。渋谷での出来事、もう一人の神書の持ち主の出現。どうやら僕らは彼らの掌の上で転がされているようだ。


今、優くんとイザナミが渦中のまっただ中にいるらしい。彼らは直接、に相対しているが大丈夫だろうか。彼は人の心象を乱してくる。そして、紛れもなく神に匹敵する力を持つ中の一人だ、一時は架空の人物とされていたが。

異形の悪魔レヴィアタン、彼は嘘つきだ。僕たちにとって彼が神の書に手を出してきたのは不幸であった。しかし彼自体、歴史上姿を一度くらまして再び存在を現したのはごく最近だ。




一度は封印されたとも言われ、そして転生したとも言われている。全て噂の域を出ないが。


状況を整理しよう。今、巨大な化物が召喚されたのは三鷹市、多くの人口を抱える郊外を狙うのは殺しが目的なのか、どちらにせよ甚大な被害は避けられない。そのまま23区に進行するつもりか? いや、だいぶ移動が鈍い。ならば、俺にしてみれば好都合。いくらでも空間をイジってやれる。



僕はまず、渋谷の事件の際と同じ方策をとることにした。深く息を吸う。

パラレルワールドを操れば対象を消去することができる、僕の能力の1つだ。ただを除いて消去することができる。その例外とは対象がである。神はこの世を創ら型どっているもののため、神は僕の能力の前提であり、また僕の存在の前提である。だから消すことは元来できない。




……いけるか? 発動要件とプロセスはクリアしているはず……。


消えていないとすれば、それは神か神に匹敵する何かだ。仮にそんなものが東京を狙い、そしてあの二人がそんな相手と戦わなければいけないとすれば、とても苦しい峠となるだろう。


……実際、その怪物は消えていないのだけど。僕も力及ばずだよ。




「やあ、トモヤ、君のいつもの無謀さも今日という大事な日には役に立たないんだね」

僕は椅子に腰かけて並行世界を切り替える作業を行っていたが、それは一時のトランス状態に入る代わりに、全く身動きが取れなくなるという大きな欠陥があるものである。

「わーお、敵襲」

すると僕の後ろにいる奴が鼻で笑った。

「馬鹿が、お前がいつになく焦って救援を頼んできたくせに。なんだ、帰るぞ」

「別に焦っていたわけではないんだけどね」

するとそいつは僕の前に回ってきた。いつも通りのラフなジャケット姿で下はスラックスまで履いて、この状況にかっこつけてる場合かと言いたくなるがそれが彼の正装なのだろうと解釈している。結んだ後ろ髪も変わらない。沿った眉毛が彼の最高のニヤケ顔を造り、僕に問いかける。

「なーに? 神の書のボウヤが俺らに単身乗り込んできたの?」

「僕が連れてきた。彼は神の書の持ち主として正当な末裔だ、彼自身もそれを自覚し始めてるんじゃないかな」

彼は髪をボリボリと搔いて怪しい笑みを浮かべる。

「まあ、あの本は五国のアネさんとあの朴念仁ボクネンジンが守ってきたものだからな。ドブに捨てられちゃ困るよな」

五国というのは優くんの姓だ。

彼と話しているうち、僕の体の縛りも少し解けてきた。脚を組み楽な姿勢をとる。

「そうだった、君は優くんのお父さんとは仲が悪かったね」

「ユウくん? ……ああ、下の名前はユウって言うのか」

彼も僕の向かいのソファに腰をかける。

「なあツチグモ、今回の件は君たちとイザナミ、優くんのでなんとかなるだろうか」

彼の名はツチグモとう。古来よりこの国の朝廷に仇なしてきた、とされている一族の末裔だ。

「ああ、にはもう現場に行ってもらっている。問題は、そのユウとやらが役に立つかどうかだな」



不意に、化物のうめき声のような地響きが起こって暫くの間続いた。

「どうやら始まったようだな」

ツチグモは気だるそうにソファから立ち上がった。


footer, どうやら優くん、また君に頼ってしまうかもしれない

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