異世界放浪記 Cogito,ergo sum

宵闇

第1話 死の先にあるものは

 生き物はいつか死ぬ。

 それは生きている限り抗いようのないことだと大人になる頃には諦めて生きてきた。


 だから、出来るかぎり楽に楽しく生きようとしてきた。

 最後には後悔を噛み締めることはなく、眠るように死ねるように。


 だけど、流石にバスに吹き飛ばされて死ぬのは嫌だなぁ。

 視界が暗くなっていくのを最後にそう思った。


 眠りから目覚めるように起きる。

 どこだここは?

 前も、後ろも、上も、下も、真っ白な空間にいた。


 天国だろうか。

 死後、生前に善行を積むと楽園に行くらしいが、残念なことに俺は人を殺したことがあるし、過去には生きるためとはいえ、盗みだってしたことがある。

 だから、違うだろう。


 そしたら、地獄だということになるが、まさか、こんな何もない場所で閉じ込めるのが地獄なのか!

 背筋がゾッとして冷や汗をかいたような感覚がした。


 こんな真っ白で何もない場所にいれば精神が強い人でも発狂しそうだ。

 俺も狂う前に出口でも探さないと。


 とりあえず、真っ直ぐに歩く。

 上下がわからなくなって、狂うのが怖いから歌いながら歩いて、たまに走って、また歩いて、どれぐらい経ったんだろう。


 自分がゆっくりと狂ってきてるのが感じながら歩いていると、突然落ちた。


 「うぎゃあぁぁあぁぁぁぁ!!」


 そして、俺は失神すると、意識が覚めた時にはとても暖かくて居心地がいいところにいた。

 ああ、とても落ち着く。

 

 そうして、まどろんでいると突然、頭から出されるような感覚があった。

 なんだなんだ?

 ぎゅうぎゅう押し出されて、い出されて息を吸うと、体の中に異物が入るような不快感に泣いた。


「おぎゃぁ、おぎゃぁ、おぎゃぁ、おぎゃぁ」


 ああ、俺、誕生したんだ。


 それから3年が経った。

 

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