第3話 新学期の予感



教室へ向かう廊下には、新学期の初日にふさわしい緊張感と期待が漂っていた。壁に掛けられた絵画は、学校の歴史や魔術に関するもので、美しく描かれた風景が壁を飾っている。廊下の床は光沢のある木材で覆われており、学生たちの足跡が続いている。窓から差し込む陽光は温かく、光の中には微かな粒子が舞っているようだった。この光景は学生たちに新たな学期の始まりを感じさせ、前向きな気持ちを抱かせていた。


生徒たちが廊下を歩いている中、友達同士で楽しげに話すグループや、授業に向かう真剣な表情の人々がいた。先生方も元気に挨拶を交わし、生徒たちに笑顔で声をかけていた。そのような様子を眺めながら、2人は教室の入り口付近まで来て中へ入室した。アリアは躊躇なく自分の席へと向かったが、セリスは少し戸惑っていた。 

「久しぶりだから、ど忘れしているんだなぁ」 

アリアはそう思った。


セリスが席に座ると同時に、後ろから肩を叩かれて振り向いたら、彼女の別の友人、ジルがいた。ジルは明るい笑顔でセリスに声をかけた。「セリス、おはよう。長い夏休み、どこに行ったの?」

セリスは微笑みながら答えた。

「ジル、おはよう。私は特にどこにも行っていないよ。夏休みの間、家で研究を進めていたんだ。新しい剣術の技についてね。もっと上達したいから、毎日欠かさず練習してたんだ。」

ジルは興味津々で尋ねた。

「本当?セリスとは模擬戦で一度も勝てていないけど、夏休みの間に魔術に関連する何か新しいことを学んだりしたの?前から思ってたけど、剣術に偏りすぎていない?」

セリスは答えた。

「ジル、言いたいことはわかるけど、今の私は違うんだ。今度からアリアと一緒に魔術の練習を始めるんだ。彼女が魔術師で、私は剣士。お互いの強みを伸ばし合うつもりだよ。」

ジルは納得の表情でうなづいた。

「それはいい考えだね。アリアの魔術の腕前は本当にすごいから、君もたくさん学べると思うよ」


実際、セリスはアリアの魔術が優れていることをよく知っていた。幼い頃からアリアが魔術に興味を持ち、その才能を開花させてきたのを見ていたからだ。アリアは学会などで魔術の研究発表を行い、高い評価を受けている。特に、精霊召喚魔術には特に優れていて、幼いころから自然界の精霊たちとコミュニケーションを取ることが得意だった。アリアが召喚した精霊は彼女の意志に従い、風、水、火、地の元素を操ることができる。


そのような他愛もない会話は教室内に響き渡り、まさに友情の証だった。しかし、その楽しいひとときも束の間、担任のミス・ウェルズが教室に入ってきて、今日の日程について話し始めた。

「皆さん、午前中の授業では基本的な魔法の基礎を強化していきます。呪文の発声と魔法陣の正確な描写が肝心です。午後は模擬訓練です。休み明けで最初の授業ですが気を抜かないように頑張ってください。」


担任の計画についての話が終わると、ちょうど魔術放送から学院長の厳かな声が全員の注意を引きつけた。

「親愛なる学生の皆さん、新学期が始まりました。我々の学院は常に知識と調和を大切にしてきました。しかし、今日から新たな段階に進みます。時には、知識の共有が不可欠であり、未来に向けての共同作業もまた新しい世界への旅路の一部です。我々は新たな力と知識の時代へと進んでいくのです。」


学院長の挨拶が終わるとすぐに、クラスメートから拍手が起こった。しかし、セリスはその言葉から従来の学院のスローガンとは異なる、いや、異なってはいないが、なんだか不穏な空気を感じた。

「ん?何か違和感を感じる…」

セリスは左手の指先で自分の胸の上を軽くなぞり、その感覚がどこから湧いてきたのかを探った。その時、クラスメートたちの笑顔や興奮する声が、セリスの不安をより強調した。アリアもセリスの不安げな表情に気づき、首を少し傾けて視線を交わした。

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拷問魔術師と惨虐な剣士の流血革命 伊達 希う @furea20

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