ラノベ売上半減!若者に返せ! ……ん?

三屋城衣智子

ティーンの求めるお話ってどんなものでしょうね

 文春の記事がTwitterにて話題になっていましたね。

 それへの反応で、「なろう系の大人向けに偏ったからなので子供にライトノベルを返してあげてほしい」という主張を見ました。

 返すにはどうしたらよいか。

 そもそも大人が無理やり奪ったのか等々ちょっと調べてみようかな、と思ってこれを書いてます。

 ちなみに元記事はこちらです。


 少子化でも、作品の劣化でもない…「ラノベ市場」が10年で半分以下に衰退した“意外すぎる理由”

 https://bunshun.jp/articles/-/63516




 さてライトノベルがなろう系に偏っているか、というと、確かに数字上でもそうなりつつあるようです。

 が、ここで注意したいのがなろう系という言葉があやふやであること。

 そしてウェブ発のラノベだからといって、なろう系要素が必ずしも入っているとは限らないこと。

 というわけであくまでもここではウェブ発のラノベとして、話を進めたいと思います。

 ちなみに、2020年度の推定販売金額は以下の記事中に埋め込まれた画像になります。

 https://bunshun.jp/articles/-/55371?page=2


 上記によると2020年時点で、ウェブ発ラノベが102億円、文庫ラノベが142億円となっています。

 2013年の文庫ラノベが推定販売金額250億円なので確かに出版社主導の文庫ラノベは大体4割減になっています。(ただしこの表は、ウェブ発ラノベが発行金額なのに対して、文庫ラノベが販売金額になっています)


 ただ、別のデータでは興味深いことが書いてあったりしました。

 それはこちらです。

 https://shuppankagaku.com/statistics/paperback/


 文庫の中にライトノベル系の文庫が含まれているかは不明です。

 が、減少度合いが似通っていたのでおおよそ同じだろう、と予測して紹介したいと思います。


 引用はじめ――――――

 文庫本

 書籍全体の売り上げが逓減するなか、文庫本の販売減が著しい。特に2014年以降、5~6%の減少が続いており、厳しい状況が続く。SNS、ゲーム、動画など無料コンテンツにあふれたスマートフォンの普及が文庫販売に与える影響が大きい。2020年のコロナ禍を機に、東野圭吾、湊かなえ、百田尚樹、佐伯泰英など文庫販売で非常に人気の高い作家が電子化を解禁する動きが相次いだ。

 引用おわり――――――出版科学研究所オンライン 日本の出版統計内、書籍販売額 より

 https://shuppankagaku.com/statistics/paperback/


 これを見る限りでいくと、文庫の内容どうこうというより強力なライバル登場となりユーザーの奪い合いが起こっているようです。

 さてこうなってくると文庫ラノベが戦っているのはSNSやゲーム、動画系コンテンツとなるわけです。

 無料でそういったコンテンツ見放題、魅力的ですね時間が溶けます。


 ここで話題となった元記事から引用です。


 引用はじめ――――――

 2013年には推定発行金額が30億円市場だった単行本ラノベ(その多くがなろう系書籍化)は、2016年には100億円市場に急成長し、以降はほぼ横ばいをキープ

 引用おわり――――――文春オンライン 少子化でも、作品の劣化でもない…「ラノベ市場」が10年で半分以下に衰退した“意外すぎる理由” より

 https://bunshun.jp/articles/-/63516?page=2


 横ばいをキープ、とあります。

 つまりは、ウェブ発ラノベはライトノベル全体を下支え中とも、捉えることができます。

 前出の図でいくと2013年ライトノベル売上は280億円、2020年は248億円です。

 競合する他コンテンツに恐らく負けてはいるものの、ライトノベル全体の売上ではどうにかガクッと下がらず、持ちこたえているのです。


 また、別の記事も読んでみました。

 https://torja.ca/entame-zanmai-86/


 それによるとラノベはコミカライズの原作としては未だ需要があるとのこと。

 魅力ある作品作り自体には成功している、とも書いてありました。


 また元記事にもありましたが、ウェブ小説書籍化がなければ文芸市場はよりしぼんでいただろう、とのことなので無くなるという事態は避けられているようです。

 衰退、という文字とはちょっと印象が違うと私は感じました。


 ただ出版社主導のライトノベルの半減は事実です。

 ですがその内訳ってどうなのでしょう?

 本当は誰が買って、ライトノベルは存続できているのでしょう?

 購買層のデータは?

 本当におじさまおばさま方の好む作品ばかりが売れて、中高生ユーザーは売り場から遠のいてるのでしょうか、作品の内容のせいで。


 確かに14歳までのデータで行くとそのようにもとれました。

 が、そこには高校生のデータがない。

 それでは実態と乖離しないだろうか?

 考えた私は少し調べてみることにしました。



 まず、高校生ともなると主体が親から子自身に移る時期でもあります。

 なので私は昨今の高校生のお小遣い事情をウェブで探しました。

 それが以下になります。

 https://school.js88.com/koukousei/life/ranking/2023money

 https://www.gakken.co.jp/kyouikusouken/whitepaper/h202108/chapter4/03.html


 高校生ともなると、洋服関係、美容関係への支出が多いようですね。

 友人との外食などにも使われているようです。

 それでは書籍代はどうでしょうか?

 高校生白書の方ではある程度使われているようではありますが、突出しているほどでもなく。

 また日本の学校というサイトではやはり、飲食や美容・服飾と比べて沢山、というわけではないようです。

 また、こちらでは漫画・アニメとそれ以外の書籍が別れており、男女ともに書籍より漫画・アニメの支出が多い。


 これは、文春記事にあった漫画売上が右肩上がりであることとも、合致しています。


 このことから、そもそも作品の内容以前に時代が変わったのでは、という雰囲気を私は感じました。




 昔漫画はどちらかというと中学ごろで卒業といったイメージがあり、小説の方が一般的であるというイメージがあった世代もあったかと思います。

 ですが今はどうでしょうか。

 大人も子供も関係なく『ONE PIECE』の映画が公開されるとなれば映画館へ殺到し、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は世界的大ヒットとなりました。

 漫画を大人が読むのは恥ずかしい、という空気は過去のものとなっています。


 コンテンツ、つまりは娯楽はどうでしょうか。

 既存のスポーツや芸術、伝統芸能はそのままに、小説や漫画、映画、一般人まで動画を作りネットへ投稿する時代です。


 娯楽は、戦う相手が増え過ぎたのでは、と最近の私は考えています。

 その中で売上をなんとか低空飛行なりに維持しているなら、大健闘では?

 少なくとも衰退しすぎて真っ青、なんてことにはなってなさそうです。




 そして本題。

 中高生は作品内容で離れているのか?について。


 これはデータがないのでなんとも言えません。

 少なくとも、内部事情を知らない第三者が決めつけるのは違うと思ってはいます。

 当事者ではないのですから。


 できることなら、当事者の声が知りたいなとは思います。

 ただそれを知るべきはアマチュアの私たちではなく、出版社やプロの作家の方だろうと考えています。


 児童書にあるからいいなのか、一般文芸とかライト文芸で十分足りてるなのか、ラノベに読みたいものがないから離れたなのか。

 もしもそうなら、知れば次への布石にはなりそうです。




 また、大人のいう「ない」は「大人として読ませたいものがない」が往々にして含まれたりもするので、あまり鵜呑みにするのもなというのが私の考えだったりします。


 例えばラノベが〜の派生の話で、最近のラノベは肌面積が云々があるようで。

 同性愛だろうと異性愛だろうと、フィクションのエロそれ以前の話になるのですが。

 教育的に性についてとか倫理や道徳、人間に備わっている機能(思春期や出産と同時に親としてのスキルが勝手に付与される訳ではない事発達障害やグレーゾーン等々)の勉強とかもうちょい現実的に深めに実装されるといいのでは、と常々思ってるのですよね。


 とにかく、誤認が良くない。

 知識として勉強し身につきさえしたら、フィクションの影響は少なくなるのではという考えです。

 それにフィクションの物語に責任を持っていったら、みんな教科書的に書くしか無くなってしまう、っていうことでもあるのかなと。

 極論を言えばですけれど。


 それに丁度ライトノベルって自立しだす頃合いに選ぶ本なので、親とか大人目線で見て好ましくないものも自然と含まれるもの。

 という考えの根底は大多数自分の思春期を思い返して、親から「またそんなもの見て!読んで!(プンスコ)」された勢、いるんじゃないの?と思ってるからだったりします。

 大人は子供の、「子供の今の真剣さや大好き」を頭ごなしに否定しちゃいけない、っていう考えです。


 エロやバイオレンスを好む子供は子供らしくないとか、あぶないだとか。

 それはただの大人が思う子供らしさティーンらしさであって、それは大概本当の子供からはかけ離れているものだったりします。

 危うい子もいるかもしれないけれど、大人が思うよりかは子供はしっかりしていたりもします。

 なのに押し付けて、例えば「これは道徳的だから良い」「これはエロいから駄目と」言いだしてしまえば、子供の本音は隠れてしまいます。


 じゃあどうすれば良いのかという話で。

 これは単純なのですが、大人は自分の子供の頃を思い出せばいいし、今の子供の現状を聞き取ることをし、相手のことを知るのが大事じゃないかな、と思うのです。


 それをして、ようやく初めて今の十代がどんな物語を求めているのかが、わかるんだろうなと。


 私は今回のことで、そんなことを考えたのでした。


 結論。

 子供に向けて作品を届けたいなら、自分の思い以前に、相手である子供の生の声を聞け。

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ラノベ売上半減!若者に返せ! ……ん? 三屋城衣智子 @katsuji-ichiko

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