寒天とトコロテンはどこが違う?
皆さんは寒天ってご存知でしょうか?
アンミツとか みつ豆 とか、和風のデザートによく入っている「白くて四角い奴」
それが寒天です。
じゃあ、トコロテンは?
色は同じく白濁。
若干、黄色がかった感じの麺類で、上から黒蜜をかけて食べる奴。
それがトコロテンです。
では、この寒天とトコロテン。
実は同じ材料から作られているという事はご存知でしょうか?
とてもとてもヤヤコシイ話になるので、どうやっても本編には収まりませんでした。ちょっとコチラで説明させて頂きます。一部、本編と内容の重複する箇所もありますが、ご了承ください。
結論だけ先に書いておきますと、トコロテンが専門店で飲むこだわりのコーヒーであり、寒天は家庭で気軽に作れるインスタント・コーヒーだという話なのですが。
では、共通した原材料と作り方の おさらい から。
まずテングサという赤い海草を、白く脱色するまで日干しにします。
それから鍋でテングサを煮込むと、次第に水が粘性を帯びてきます。
液体がドロドロになったら、一度こして海草をとりのぞきます。
それを冷ますとゼリー状になる。冷蔵庫でなくとも常温で固まります。
これなに?
この完成したゼリー状の物体。結局なんなの?
実はトコロテンです。
一般的に知られているトコロテンは天突きから押し出された後の姿。
このゼリー食材の名称こそが「ところてん」なのです
漢字で書くと心太。心が強いデザートなのか?
え? じゃあ、寒天って何なの?
このゼリー物質(ところてん)に一手間くわえ、更に加工したものを寒天と呼びます。寒天を作る場所はどこか雪の降る北国だと思って下さい。
どうしたら「ところてん」が寒天へと変わるのか?
まず四角い箱に入れた「ところてんゼリー」を寒い寒い屋外に一晩放置します。
すると翌朝、ゼリーが四角い氷になるわけです。成分が大半は水分なので。
その凍ったゼリーをさらに放置。
やがて日中の日差しに温められ、氷が溶けていきます。
氷が溶けた後に何が残るのか? 完全な虚無?
そうではなく、流れ出すのは水分だけであって、テングサの繊維と精分は四角いままで箱の中に残ります。からみあった繊維の隙間から水分のみが出て行ってしまうのです。鍋で煮込むことで完全に融合した海草と水。それを凍らせることで再び分離させる感じですね。
何度も何度も冷凍解凍を繰り返し、残った繊維の塊を乾燥させて完成。
こうして出来上がった繊維のブロック。それを棒寒天と言います。
何の為にそんな事をするのかと言えば、すなわち保存用。
水分がなくなったので長期保存に適しており、デザートを作る際に一からテングサを煮込む手間が省けるのです。
この棒寒天を水でふやかしてから、鍋で煮込むと……?
やったぜ、ゼリー物質を再生することに成功したぞ!
このように「再生されたゼリー物質」こそが、みつ豆に入っている白くて四角い彼。そう、寒天なのです。では、名前の由来は?
どうしてそう呼ばれるようになったのか?
黄檗山萬福寺を開創した隠元禅師に気に入られ「寒空」や「冬の空」を意味する漢語の寒天に寒晒心太(かんざらしところてん)の意味を込めて、寒天と命名したとのこと。
これはつまり……。
寒天という言葉、本来は保存用の棒寒天を示す単語だったのではないかな?
現在では、みつ豆に入っている四角い彼が「寒天」としてスッカリ有名になってしまったようですが。由来からして原材料の名前っぽいですね。かんざらしトコロテンとは、寒い所にさらしたトコロテンを意味しているはず。イコール、棒寒天。
では、棒寒天の用途は? 寒天を作る時にしか使われないのか?
調べてみたら、ようかんを作る時なんかも棒寒天が使われるみたいですね。
そうか、何も知らず私は普通にヨウカン食べていたわ。
スマンな、棒寒天。
じゃあ、トコロテンと寒天とで味を比較したらどうかと言えば。
棒寒天を作る際に水分と一緒に色々な成分が流れていくので。
やはり寒天の方がトコロテンよりも薄味になります。
寒天が無色でトコロテンが少し黄色っぽいのも そのせいかと。しかし、味がないということは、それだけ色々な物と組み合わせが自由なわけです。
その辺は中華料理でフカヒレが重用されるのと同じなのかも。
味に関しては好みがあるので、どっちが上とは一概に言えないでしょう。
ちなみに、一説によると棒寒天は……。
北国に住むズボラな人が「ところてん」を屋外に放置したまま忘れてしまい、数日たってから思い出して見に行った所、偶然にもできあがっていたのが始まりだということ。本当? ズボラも時には役立つのです、多分。
まぁ、長々といったい何を語っているのかと言えば。
アンリ、君が作ったのはトコロテンゼリーなのだよ。
寒天じゃないよ、それは一度凍らせた物だから誤解だよ。という話です。
冷凍まほーの使い手がいれば寒天ゼリーも作れたんだけどねぇ。
これでスッキリ。
ついでに少し塩の話もしておきましょうか。
本編でアンリが海水から塩を作ると発言していますが。
これも一筋縄ではいきません。
単に海水を汲んで火にかけるだけだと……。
はい、鍋の底がちょっとザラザラしているだけですね。
その前に鍋が焦げるわ! アチチ!
海水の塩分濃度はおよそ3.5パーセントだそうで。
そりゃ無理だわ。97パーセントの水分を蒸発させたら何も残らん。
なので、塩分濃度をどうにかして高めていかないといけません。
まず鍋に海水を汲み、日当たりの良い浜辺に置いておきましょう。
水分が蒸発してきたら、そこにまた海水を追加で注ぎ入れます。
これを根気強く何度もくり返していくと、塩分濃度は高まっていきますね?
最後にそれを火にかける。するとようやく塩が出来上がるわけです。
塩づくりの理屈は、オオヨソそんな感じ。
アンリ達は五人しか居ないので、そのやり方で間に合うかもしれません。
しかし、もし塩で商いをしようとするなら? もっと効率を重視しないと。
そこで塩田という「施設」が必要になってくるわけです。その仕組みや歴史まで説明すると、それだけで一本シナリオが作れてしまうので。
この辺にしておきます。それはまた、別の物語。海の近くに海水の塩を凝縮させる溜池を幾つも作るような物と思って下さい。
近年ではその塩田も非効率的なので、ポンプで汲み上げた海水を何度も熱い斜面に流すやり方で塩分濃度を高めたり(流下式)海水に電気を流してナトリウムイオンを電極にひきつけ強引に塩分を集めてしまうやり方があるそうです(イオン交換膜製塩法)
やり方は時代に合わせて進化するけれど、やる事は基本的に同じ。
塩分濃度を高めて水分を蒸発させる。
完成されたスタイルは変わらない物なのです。
まったく先人の知恵には驚かされるばかりですね!
彼らは自然から恵みを得る方法を知り尽くしていたわけです。
自らが生き抜く為に。
棒寒天にしても塩にしても、人間の進化の過程が垣間見えるようで非常に興味深い。そのまま捨て置くには余りにもモッタイナイので、取り上げた次第であります。
普段、身の回りにある……在って当たり前の食材たち。
その陰には先人の苦労と深い歴史があるのかもしれません。
つづくッ!
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