第11話 女子との服選びは苦行らしいな

 とある洋服店。

 俺は既に十何着の服が入った様々な紙袋を肩からかけたり手に持っていたりしていた。


「あ、あの……み、澪さん?」

「ん? どうしたの? ほら、これ試着してみて」


 澪が、男物の服とズボンを数着俺に渡してくる。

 俺は流れでそれを受け取って———。


「あ、うん———じゃなくてどんだけ続けんの!? もう5時間は余裕で経ってるよ!?」

「そうね。それがどうしたの?」

「いやそうね、じゃなくて。幾ら何でも長すぎない? もう肩とか重すぎて死にそうなんだけど」

「軟弱ね。男なんだから頑張りなさいよ」


 ならせめて1袋くらい持てよ。

 俺はサ◯ヤ人じゃねぇんだぞ。


 そう言いたいが、俺が服を選んでくれと頼んだ———と言うか、澪には『時間が掛かっても文句言わないで』と釘を刺され、俺も『勿論』と答えてしまったので、とてもじゃないが言えない。


 うん、自分で墓穴を掘ったバカでした。


「……直人」

「あい?」

「今更だけど、何のために服を買うの?」


 俺が自虐していると、澪が顔だけ此方に向けて訊いて来た。

 何のために服を買うかなど分かるだろうに随分と言わせたい様だ。


 しょうがない。

 少し恥ずかしいが、欲張りな澪のために言ってやるとするか。

 ちょっと覚悟だけ付けとくわ。


「そんなのお前とのデート以外無いだろ。男子がちゃんとした服を着るのってマジでそんくらいだぞ」

「ま、まぁ、勿論分かっていた……わよ?」

「別に無理して知ったかぶらなくていいぞ? 澪は女子なんだし男子のことが分からなくていいんだぞ?」

「……直人に言われると何かヤダ」

「何で!?」


 随分と酷い言い草だ。

 まぁ俺もカッコよくないのは近くても自覚はしているが。


 と言うか話が一気に変わるが……めちゃくちゃお腹空いた。


「なぁ、少し昼飯でも食べないか? 俺ら朝から何も食ってないだろ?」


 それでも何とかして座りたい俺は、澪に提案してみる。

 昼時の12時などとうの昔に過ぎ去っているので、今ならば比較的少ないはずだ。

 それにフードコートなら座れる。


「そうね……もう少し選び足りないけど、アンタの服10着くらいは買えたし、そろそろご飯にするのもいいかもしれないわね」

「よし行こう、直ぐに行こう!」

「どんだけ座りたいのよ……」


 五月蝿いわい!

 こちとらもう座りたくて全身がうずうずしてんの!

 

 俺は澪のツッコミに心の中で反論しながら、足早にフードコートへと向かった。









「取り敢えず何処も空いてないと。そうかそうか……っておかしいだろ、何で空いてないんだよ! もう2時過ぎやぞ!?」

「こ、これは予想外ね……皆お昼を逃したのかしら……」


 澪が顔を引き攣らせてそんな非現実的なことを言ってしまうくらいフードコートは客でいっぱいだった。

 今2時なのだが、12時のお昼時だと言われても疑わないくらいに混み合っており、座るのも大変なくらいである。


「よし、取り敢えず席だ、席を探そう!」

「そうね」


 俺達は座るために、大混雑したフードコートに足を踏み入れた。

 

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