ダンジョン下層で秘密基地生活~異世界転移したらダンジョンの下層でした~
ポポ三太郎
01話 〖気付いたらダンジョンでした〗
眼前に広がるは岩、岩、岩。
ゴツゴツとした感触のそれは、空を覆い隠している。
「は? え? あれ? どういうこと?」
俺の名前は
新卒で会社員になりはや一年。
今日も今日とてスーツに袖を通し、憂鬱な気分で出社中・・・だったのだが。
少しあくびをしている間に変な場所に迷い込んでしまったようだ。
「マジでどこだ・・・ていうか暗!! あと寒!!」
地盤でも崩れて飲み込まれたのか?
とりあえず体は少し土が付着しているだけで怪我はない。
だが、パッと見それらしい出口もない。
落ちる水滴の音が空洞に響いている。それなりに広そうだ。
明かりをつけようとスマホを取り出す。
電波は・・・圏外。残念ながら助けは呼べなさそうだ。
右も左も分からないが手探りで空洞を進んでみる。
「すいませーん・・・誰かいますかー?」
これだけ大きな空洞だったらほかにも落ちてきた人がいそうなもんだが、自分の声が反響するだけで返事は帰ってこない。
流石に不安がこみ上げる。
このまま誰も来なかったらどうしよう、そう思いながら更に歩を進める。
「なんだこれ、くっっさ!」
空洞の奥からは強烈な異臭がする。
それと何かを咀嚼するかのような音も。
確実に近づいてはいけないオーラを放っていたが、怖いもの見たさと人かもしれないという軽い希望で異臭に近づいていく。
目の前にある曲がり角、この先から確実に気配を感じる。
スマホのライトを消し頭だけそーっとのぞかせる。
「ッ!?」
暗くてよく見えないがそこには何かをむさぼる生き物の姿があった。
何の生き物かは分からない。
だがこれははっきりといえる、人間じゃない。
身の危険を感じ来た道をひっそりと戻る。
「ちょ!?」
声が出てしまいとっさに口を塞ぐ。
来た道にも別の何かがいたという状況に感情が漏れ出たのだ。
前門の虎後門の狼とはまさにこのこと。逃げ道はない戦って勝てる算段もない。
できることといえば、道の端っこにうずくまり過ぎ去るのを願うのみ。
あまり現実的な策ではないが、一番可能性がありそうなのもこれだ。
神に祈り壁に手をかけたその時だった。
ガコンッ! という音とともに壁が開き、その中へ吸い込まれるように落ちていった。
「うわあ! あがっ! いってえ・・・」
奴らが入ってくる前に壁は音を立てて閉まっていった。
「助かった・・・のか? でも動かないと、いつどこからまた来るか分からない」
周囲に異音・異臭の類はなくスマホのライトをつける。
するとそこに道はなく、それなりのスペースがある部屋のようになっていた。
自分以外に生き物はおらずホッとする。
「よかった~、でも道はないのか、ならここでひと休憩して・・・って、なんだこれ?」
部屋で見つけたものにライトを当てる。
かなり分厚い何かの本だった。
土やほこりを払うと本のタイトルが出てきた。
「千の魔導書? 厨二全開だな・・・」
どうせここで休むつもりだったので、興味本位でその本を開いてみる。
本の内容は魔法の使い方と様々な魔法の効果や用途だった。
数千ページにも及ぶそれの隅々にまで、魔法のことでぎっしりだった。
「うわあ・・・よく書いたなこんなん。読んでるだけで頭おかしくなりそうだ」
でも少し興味深い。ちょっとでも気を紛らわせられればよかったので実践してみることにした。
魔法の使い方に関しては冒頭に書いており、それを使って初級の炎魔法とやらを使ってみることにしよう。
「まずは魔法を発動したい体の部位に意識を集中させる・・・じゃあ掌で。あとは炎の魔法を意味する言葉を言えばいいのか、簡単だな」
掌を上に向け意識を集中する。
あ~何やってんだろうな俺いい年こいて社会人にもなって魔法出そうってか? 流石にこれはドン引き案件だな。
そして言葉を発する。
「ロズ」
ボッ、という音を鳴らし小さな炎が掌に浮かんだ。
「ん? え? あ・・・えっと~、できちゃった?」
ダンジョン下層で秘密基地生活~異世界転移したらダンジョンの下層でした~ ポポ三太郎 @nasaka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ダンジョン下層で秘密基地生活~異世界転移したらダンジョンの下層でした~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます