012 戦闘訓練

午後になり、ベルカ、クレオ、ロゼッタの三人がホテルに合流した。


「じゃあ、これから演習場に行きまぁす」

引率のカルメン先生に連れられて、俺たち4人と1丁は、街から少し離れた山すそにある、開けた場所までやってきた。


200メートル四方ぐらいの平地で、奥の方には銃のターゲットが並んでいる。

ここは曲撃ち団が練習に使っている場所なのだそうだ。


準備体操が終わった後、ロングソードを手にしたカルメンさんがおもむろにこう言った。

「さて、さっそくだけど、あなたたちの実力を見てみたいわ。ひとりずつかかってきなさい。まずはベルカちゃんから!」


ベルカが背中の剣をゆっくりと抜いた。

レイピアのような刺突用の長剣だったが、良く見ると剣の腹にも日本刀のような刃文はもんが波打っている。

突くのも斬るのも可能な、万能の剣と言えた。


ベルカが突きの構えを取って、カルメンに襲いかかる。

「ちぇすと――――‼」

カルメンさんが涼しい顔のまま剣の腹の部分で攻撃を受け流す。

そのまま剣を横に振ると、ベルカの身体が吹っ飛んだ。

ベルカの身体に傷が無いところを見ると峰打ちのようだ。


「はい次、クレオちゃん!」

クレオが僧侶の杖を振り、攻撃魔法を唱える。

「ノスブーラ‼」

杖の周囲が急激に冷え、そこからブリザード攻撃が繰り出された。

カルメンが空中に素早く魔法陣を書く。

その陣が盾状に姿を変え、攻撃を跳ね返す。

跳ね返った攻撃が術者であるクレアに返り、彼女はその場に倒れた。


「次はロゼッタちゃんね」

ロゼッタが魔道士の杖を手にして呪文を詠唱する。

「……ボファーラ」

杖の先端からボフッと炎が立ち上がり、炎の塊がカルメンめがけて勢いよく発射された。

カルメンが片手をひらひらさせると、そこに細かい粒子が集まってきた。粒子は形を変え、空中で水流を形成した。

水流はロゼッタが出した炎を押し流すと、そのままロゼッタに当たった。

「きゅう……」とロゼッタが昏倒する。


「次、エリナちゃん」

と、言われてもどうする⁉ この子ろくに実戦経験がないぞ。

仕方ないな、とりあえず足を使ってみるか……


「エリナ走れ!カルメンさんに俺を向けたまま周囲を回り続けるんだ!」

無言でうなずくと、エリナは俺の指示に従ってカルメンの周囲を左回りに回り始めた。

カルメンがふっと笑い、回るエリナに身体が正対するように動き出す。


「次、どうするの?」

「そのまま回り続けて、俺が合図を出したら逆に回れ」

「うん」

エリナは言われた通りそのまましばらく左回りを続けた。


「今だ!!」頃合いを見て俺が叫ぶ。

エリナが踏み出した足を踏ん張り、身体の向きを反転させた。カルメンの身体がエリナに正対しない一瞬が生まれる。

自動照準オートエイムで6連射!」

俺はスキル発動した。6発の弾丸がいっせいにカルメンに襲いかかる。


カルメンは横を向いたまま右手をパッと開いた。

飛んでくる弾丸全てを手のひらで受け止めると、そのうちの1発をデコピンの要領ではじいた。


はじかれた弾はエレナめがけて一直線に飛んできて、彼女のおでこに「ビン」と当たった。

「あでっ!」とエレナもその場に倒れる。


「これはなかなか、これからの鍛え甲斐があるわねえ……」

カルメンさんが、にやっと笑った。


立ち合い稽古(というか、一方的に四人がやられているだけなのだが……)は、その後も一週間ほど続いた。


最初はひとりずつ相手をしていたカルメンさんだったが、そのうち四人まとめて相手にする練習へと変わり、四人はだんだんと連携プレイを相談するようになった。


一週間後、四人の連携プレイが見事に決まり、ようやくカルメンさんに一矢報いることができた。

……といっても、エリナの放った弾丸がカルメンさんの頬をかすめた、というだけなのだが。


カルメンさんは頬の傷を治癒魔法で一瞬にして直すと、四人に向かってこう言った。


「いよいよ明日からはダンジョンにもぐってもらうわ!」

その言葉を聞いた四人がいっせいにへたり込む。

ようやくこのきつい練習の日々から開放されるのか……。

四人の心中を、その表情が物語っていた。

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魔銃に異世界転生したのでレベルアップで機能を追加しながら少女の復讐に手を貸しつつ最強を目指します 五十嵐有琉 @uryu_igarashi

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