わたしの推しは緑色
極上檸檬
推し活
このアイドルの中で誰が一番かっこいいと思う?
そう聞いてきたのは、友達の結だった。その時のはわたしはといえば、もっぱら2.5次元アイドルに夢中で生身の人間なんて興味がなかった。
「うーん、これかな」
とりあえず、一番端っこにいる地味で一番不人気そうな人に指を指した。
「うわ、さすがB専の菜穂やわ、一番人気ないで。わたしはこの人」
赤色のヒラヒラ衣装に金髪の派手な男、わたしが一番嫌いなタイプの男だ。
「へぇ、いいやん。結の好きそうなタイプ、いくつ?」
「アイドルの年齢は聞いたらあかんねん。まあでも年上なら嬉しいわ」
当時流行っていた誰でも投稿できる動画サイトから有名になっている人は聞いたことあったけど、多分わたしが指を指したこの人は売れもしない地下アイドルで生涯を終えるんだろう。可哀想に。
「今度大阪でライブあんねんけど、ついてきてくれへん?こんなん頼めるん菜穂しかおらんねん」
「嫌やわ〜、わたしはこの子だけに全てを捧げるって決めてるねん」
リュックに付けてた2つくくりの女の子の人形を結の前に突き出す。
「それはそれ、これはこれ!やで!菜穂、一回行こうや〜お金はうちが全部払うから、な?」
「もうしょうがないな〜今回だけやで!」
全額払ってくれるなら仕方ない。
これがわたしの10年にも渡る推し活の始まりなんだけど。
わたしの推しは緑色 極上檸檬 @gokujouremon
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