第2話 神渡り


旭駅について深く息を吸った。


(核融合消滅に必要な物質を俺が持ってる.....)


核とはなにか、融合消滅とはなにか、耀の体には何があるのか。そんなことを考えているうちに、旭駅に着いた。


まずは、核融合消滅センターに行かなくてはならない。耀は駅前の地図を頼りに、核融合消滅センターへ向かった。


「ここか。本当にここなのか?」


本当に核の研究をしているのかと疑うほど、傷んだ建物であった。ひびの入った鉄筋コンクリートの壁、明かりが消えかけている、非常口のマーク。


耀はとにかく中に入った。


二階建ての建物ではあるが、中に入ると何もない。誰もいないが、【こちら】と書かれた矢印は斜め下を向いている。


おそらく地下なのであろう。矢印に沿って耀は歩いた。


すると、少しずつ足元が見えてきた。そのまままっすぐ行くと、大きな柱が立っていた。


柱にはいくつもの、線がつながれており、その線はところどころの部屋につながっているようだ。


その部屋には数人の研究員が仕事をしているのが分かる。


「これが、核の根源。【御柱(みはしら)】だ。」


耀は、大きく目を開き、その男の顔をじっと見た。


「お父さん」


涙目になりながら耀はそう言った。


「大きくなった、耀。ここに来たってことは手紙を読んでくれたんだな。」


3年前と変わらない。声、仕草、表情。すべてが耀にとってはうれしかった。


「まあ、とにかくお前を呼んだ理由を詳しく説明しないとだな。」


二人は事務室へと向かった。その様子を第2研究室から横目で見ていた女性がいた。


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「そこに座って」


耀は事務室のソファに座り、父【健御名 豪】がお茶を持ってきた。そして、豪が椅子に座り深刻そうな顔をして、話し始めた。


「単刀直入に言う。お前は来月死ぬかもしれない。」


耀は薄々気付いていた。だから、そう言われても、顔色一つ変えず、豪の話を聞いた。


「だが、確定したわけではない。融合消滅に必要な物質はお前以外にももっている人がいるかもしれないし、融合消滅を行ってもお前は死なないかもしれない。」


そんなことを言ってきた豪に耀は大きな声で言った。


「お父さんは、俺に死ねって言いたいのかよ!!確かに薄々感じてたよ。融合消滅って聞いてから俺は世界のために死なないといけないのかって。」


自分の息子にこんな声を張り上げられたのは初めてだった豪は、勢いよく立ち上がって耀の頬を叩いた。


「そんなこと思ってるわけないだろ。国からの命令なんだ。何としても4年後の2077年までには核を消滅させろっていう。この3年間お前を使う以外の方法を必死に探したんだよ。国にも交渉に何度も行った。でも、お前がここに来てしまったから現状を言うしかないだろ。」


豪もとても悲しそうだった。方法の融合消滅以外の消滅方法を研究していたのであろう。


「ごめん。俺何も知らなかったんだよ。」


ここでいくら喧嘩してもなにも変わらないと思った耀は豪にこういった。


「ねえ、2077年って、健御名家の儀式の年じゃない?2077年までにって言ってたけど、その年に何が起こるの?」


豪は少し黙ってしゃべりだした。


「神渡り(みわたり)だ」






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