タケミナカタノミコト

@yutetsu

第1話 眩

16時39分、神渡駅(みわたりえき)から尖石駅(せんせきえき)に向かう電車

に乗った。


約7分ほどで着く。


電車の速度が90キロに近くなった時、建物の隙間から西日が照らしてきた。


今日は2070年10月29日。


秋もそろそろ終わる時期、西日がとても眩しい。


昔から山に囲まれているこの地域は大きなビルは建っていない。


住宅街の横を電車が通ると、西日が何度も照らしてくる。


----------------------------------------16時43分-----------------------------------------


その西日という眩しい光が、とある塔に隠れた瞬間、ここ「神渡市(みわたりし)」を大きな核爆発が襲った。


一瞬だった。何度も照らしてきた西日に紛れて核爆発の光に打たれた。


俺は奇跡的に生きていた。


電車も吹き飛ばされガラスは粉々。


電車のドアに寄りかかっていた女性は、ガラスの破片が上半身に突き刺さり、肌はただれていた。


なぜか「建御名 耀(たけみな よう)」は擦り傷、切り傷程度で済んでいた。


そんなことに気にしている場合ではなかった。


ついさっきまで眩しかった西日は煙に閉ざされ周りはくらい。


爆発からどれくらいの時間が経ったのか。


煙に包まれてはいるが、前は見える。まだ少しではあるが太陽は出ているのか。


遠くから消防車や救急車のサイレンが聞こえてくる。


耀は建御名駅からすぐのコンビニで買った、大きめのキットカットを咥えて、片足裸足で家を目指した。


家に着くまでに、数々の死体を見た。


建物倒壊によりつぶされた死体、全身火傷の死体、死体は見飽きた。


あの爆発で半径5キロの建物は全壊、10キロ圏内の建物は大きく崩れていた。


家までは約15キロ。尖石駅の近くに父の職場がある。父の安否も知りたい。


しかし、駐車場には父の車はなかった。俺はそこで今朝のちちとの会話を思い出した。


「今日は泊まりで出張だから」


父はきっと生きているんだろうな。


きっとテレビやSNSでもこのことについて取り上げられているのであろう。


もう前も見えないくらい真っ暗になった。


使えないスマホ、ボロボロの靴、火傷した右手、何も考えられなくなっていた。ただ消えかけている街灯を頼りに、進んだ。家に着いた。家は半分崩れいてた。



ガラガラガラ、横にスライドするドアを開け家に入った。


「よう!!」


母が泣きながら飛びついてきた。顔は煤で汚れていた。火で暖をとっていた。


何とか生きているみたいだ。


家に残っていた食べ物を食らい、水を浴びて着替えもした。


「明日は、避難所にいこう。」


母はそう言うと静かに寝た。俺は何が起きているのか冷静に考えた。


核爆発の原因、投下の可能性、そんなことを考えているうちに俺は眠りについた。


ピカッ!!無音と爆発と熱風、そしてあの見たことのない光、それが夢に永遠に出てくる。


悲鳴、死体を踏み鳴らし歩いた道、そしてあの塔、耀が目を覚ますと外の煙は完全に消え、爆弾投下まえの青空が広がっていた。


今までの平和が一気に消えた。


避難所に着き大きなテレビに映し出されたのは、あの爆発の瞬間であった。町中の防犯カメラや、ライブカメラ、さらに生配信の録画など、どのチャンネルも同じことしかやっていない。


詳しい死者数や生存者、爆発範囲、ありえないほど詳しく報道されている。


あれは昨日の夕方に起きた出来事なのになぜこんなにも情報が早いのか。


しかし、どのニュースを見ても爆弾を投下した機体は映っていなかった。


おそらく誰かが爆弾を投下したという可能性は低かった。


耀は知りたかった。爆発の原因を。そして原因を突き止めて父に会う。


あいつにもまだ言わないといけないことがある。



あれから3年。


父さんが帰ってくることはなかった。


耀は父の安否と他県の現状を知るために父の出張先に向かおうとした。


よく考えてみたら父の仕事なんて知らなかった。


気にもしていなかった。耀は、出張先を知るために父の職場へ向かった。


入口にあったインターホンを鳴らし、誰かが来るのを待つ。


しばらく待つと、40代後半くらいの女性が出てて来た。


その女性は木村というらしい。木村さんは少し耀の顔を見つめてからこう言った。


「もう三年も経つのね。君が来ることは知っていたわ。とにかく中に入って。」


俺はこの女性を知らない。この女性は俺のことを知っているようだった。


「耀くんだよね?お父さんから話は聞いてるわ。あなたは私に会うのは初めてよね。今から話すことはあなたのお父さんからの手紙よ。」


耀は少し緊張していた。三年前の父からの手紙。その言葉には重みを感じた。そして木村さんは読み始めた。


------------------------------------------------------------------------------------------------これを読んでもらっているということは、お前は生きているんだな。お前が生きているという前提で話そう。俺は今「旭市」というところにいる。そこで核の研究をしているんだ。核と言ってもそんなに危険な研究ではない。俺はお前が生まれた日に、偶然、核の制御の方法を見つけたんだ。理由はわからない。しかし、この発見はとても大きなものであるんだ。この発見のおかげで、原子力発電の核の力を自由に制御でき、さらにあの忌まわしい原子爆弾の完璧な爆発範囲まで制御できてしまうんだ。方法によっては素晴らしいものであるがとても危険なものでもあるんだ。だからその発見を国に保管していたんだ。だが、ある日何者かにその情報を奪われてしまったんだ。さらに核の特性として約60日前に核は原子一つ一つの破壊が始まり、その最後の原子が破裂した時に大きな爆発が起こる。その爆発の例が84年前の「福寿市核爆発」なんだ。核は人工的につくられた物質なんだ。誰の手によってつくられたのかは不明なんだがな。その爆発があってから、世界核管理協会は爆発を最大限抑えることに成功したんだ。爆発のカウントダウン、つまり爆発までの約60日前がいつ来るのかはわからない。だから常に核を使用する施設では毎日検査が行われている。いつかこの核爆発が意図的に起きないように俺は「核融合消滅センター」で核の完全消滅の研究をしている。核融合消滅にはとある物質が必要なんだがその物質を持っているのがお前かもしれない。怖いかもしれないがここに来てもらたい。

                               

                       父より 2070年 8月29日

------------------------------------------------------------------------------------------------


「ここまでよ」


木村さんはそういった。


耀はとにかく自分が父親のところに行かないと何も始まらないと思い、旭市へ向かった。

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