最終回

彼の言葉を聞いて、コテージから出てしまった。こんなことをしてしまって本当に良かったのかと自分に問いかけたが、今の私が彼を助けることが出来るのかと思うと、無駄に死ぬ人が増えるよりもまだ良い結果だったのではという結論に行き着いてしまった。


私が外で呆然としていると、段々と他の人たちも集まってきた。コテージが火に包まれているその様子は、私たちに恐怖を植え付けるにはあまりにも十分すぎるものだった。


奈緒子「これは一体…?」


早乙女さんが問いかけてきた。私は「日辻さんが燃やしたんですよ。自殺するために」と事実をただ説明した。その後に、彼女へ向かって、日辻さんの遺言を、聞いた通りに言った。


奈緒子「彼はこう言ってました。『今からお前は五人殺した殺人鬼として、一生苦しんで生きていけ、早乙女 奈緒子』と」


航平「おいおい、なんの話だ」


魚川さんが私たちに聞いてきた。私は、「今回の事件の犯人は日辻さんでしたが、早乙女さんも計画に加担していたんです。だから、一生その罪を抱えて生きてもらいたいんでょう」と返した。


愛香「そんな…早乙女さんがこの事件に関わっているなんて、嘘じゃないんですか?」


愛香ちゃんが聞いてくる。この人たちは、私が聞かれたくないことを次々に聞いてくる。段々と嫌気がさしてきた。そんな私の様子を見かねたのかは分からないが、早乙女さんが、代わりに答えた。


奈緒子「そうです。私はこの事件のために、場所を用意して、彼が殺したい人をここに呼び出しました。彼は知っていたんです。彼のお父さんが殺された原因を。そして、殺した四人とそのきっかけを作った私を、ここで、このツアーで殺す計画を立てたんです」


どうやら、私が答えるぐらいなら彼女に答えさせた方がよかったようだ。特に、その事件の全てを知っている人が生き残っている以上、それを本当のことだと信じる人がいるから、原因を担っている彼女の発言は紛れもない事実だと思わせることができる。


さらに追い討ちをかけるように、彼女の口から、彼女は日辻さんの実の母親であるということが告げられた。分かりやすく驚愕している人たちが目の前にいた。あまりにも衝撃的ないくつもの情報を、一気に受け入れることが出来る人がいたのだろうか。そう思えるほどに、言葉を失っていた。


そこまで告げて、彼女は、「私も、そろそろケジメをつけないといけないわね」と自分に言いきかせていた。


沙英「ケジメ…?早乙女さん、あなたもしかして…」


牛飼さんが疑問を投げかけようとしたところ、早乙女さんはそれを予測していたかのようにこう言った。


奈緒子「今から私も、あのコテージに行くんです。子供を殺人鬼にしたのは私なんですから、彼の後を追って死ぬんです。それに、彼に狙われていた命なんですから、これ以上生きていたところであまり意味はないと思います。ここで死ぬはずの命だったんですから」


彼女もまた、決意が固まっていた。どこにも嘘がない発言だっただろう。彼女を止められる人はいなかった。彼女は、最後に、小さく「ごめんね」とだけ呟いて、日辻さんのコテージに向かった。


なんとか足が動くようになったところで、コテージの消化を始めた。しかし、あったものを適当に選んで使っただけなので、火が消えることはなかった。


そんなことをしていた私たちの元に、ヘリコプターがやってきた。救助用のものだろう。朝に来ると思っていたが、実際には夜明けよりもずっと前だった。そして、消火設備を使って、なんとか消化できた。そして、そこから二人の焼死体が出てきた。それらは体をくっつけあっていた。まるで親子のようだと思った。


私たちは、ヘリコプターに乗って星座山から出た。ほんの僅かな時間の間に、六人も死んでしまった。犯人は、日辻さんは、いや、星野さんは最後に救われたのだろうか。私にはさっぱり分からなかった。


星座山を出て数日後、友人に誘われて飲みに行ったその帰り道のことだ。ふと、空を見てみた。綺麗な星の数々が輝いていた。そういえば、この間のツアーの時は星なんて見ていなかったと気づいた。山なら、きっとこんな街灯がある場所なんかよりも、ずっと綺麗に見えただろう。


星座山殺人事件は、輝く星の下で幕を閉じた。地上は血と憎悪で汚れていた一方で、空はどれほど綺麗だったことか。


雲で覆われていない限り星が輝いて見えるのは、何か意味があるのだろうか?いや、考えすぎだ。私は自分にそう言い聞かせて、星に照らされながら家に帰るのだった。


(星座山殺人事件 終)

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断罪の探偵 2 星座山殺人事件 柊 睡蓮 @Hiragi-suiren

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