第3話 桜日奈

 私はずっとずっと私だけの王子様を探している。小さい頃、お母さんに読み聞かせてもらったあの絵本の中のような王子様を。でも現実はそうじゃないんだよなぁ〜。

 友達にこの話をするといつも「そんなのいるわけないじゃん」とか「そろそろ現実見なよ?」など私にとって残酷な言葉を次々に言ってくる。


 だから私は、王子様に憧れることをやめた。このまま普通に過ごして、普通の人と結婚して、普通の人生を送る、そしていつか死ぬ。それも悪くないじゃんと思った。


 でもね、今日ある1人の男の子を見た時、私の運命が明確に変わったのを感じたんだ。

 それはまるで、春の桜全てが私たちの出会いを祝福しているようだった。

 初めてだった、人を見てこんなにも心動かされたのは。一目惚れって言うのかな?


 その男の子は、自動販売機の近くのベンチで目を瞑っていて、それでさえも幻想的にみえた。すぐに新一年生のブースにいないことから先輩だというのがわかった。


 先輩たちが私たち新一年生の入学式のために、準備してくれているのはだいたい雰囲気でわかるからだ。

 

 私は、勇気を振り絞り話しかけることを決心し彼に近づいた。


 「せんぱい」

 反応がない?寝てるのかな、ふふ、かわいい

  もう一度。

 「せんぱい!」


 「ん、誰?」

 

 

 

 


 

 

 


 

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