第2話

 高校2年生の春。

 今日からうちの高校に新しく新入生が入ってくる。

 入学式の準備に当てられていた俺は、気だるげな雰囲気を隠そうともせず新入生を指定の場所に誘導していた。

 新入生はみんなさまざまな表情をしている。新しい環境をワクワクしている子、グループになって騒いでいる子達、これからの学校生活に緊張している子達。


 そういう子達を見ると自然に思う。

 「どうでもいい。」

 だってこの先の人生に関わる可能性も少ないし、関わりたくもないから。

 自動販売機近くのベンチに座り目を閉じようとした時、なにか声がした気がした。

 「せ ぱぃ すか?」

 幻聴か、疲れすぎているのかもしれない。

 「せんぱぃ」

 目を開けると、前に綺麗な夏の終わりを告げる優しい茶色の瞳と髪をした女子生徒がおれに向かって何かを言っていた。

 「なに?」

 

 「やっと返事してくれましたね!私新一年の絢瀬歌恋って言いま〜す!先輩かっこいいんで話しかけちゃいました。私の彼氏になってくれません!?」


 「は?」


 この日こいつと出会ったことが、何もない俺を変えたという事実を知ることはまだ先。



 


 

 

 


 



 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る