会いたい相手がいることは…。

毎日同じことの繰り返し。

起きて、ご飯を食べて、仕事がなければ訓練を。王族になにかがあればすぐに向かう。くたくたになったあと、無理やりご飯を詰め込み寝る。

ずっとこれの繰り返し。


「お兄ちゃんに会いたい…。」

ポツリと独り言を漏らした。独り言…のつもりだった

「パルフェ。」

「あ、先輩…もしかして…聞こえちゃいました…?」

専属護衛の中で、数少ない女性隊員だ。

いつも狐面を被っており、素顔は見たことがない。

唯一わかるのが髪の毛の色だ。黒曜石のような、真っ黒い、つやつやした髪の毛だ。

「フフッ少しな。」

「お恥ずかしい…。」

「そろそろ兄離れをしたほうがいいんじゃないか?」

ドアにもたれかかり、腕を組んで先輩は言う。

「そうかもしれないんですけど…。20年間共に過ごしてきたので…。」

「まぁ、一般的には10代で独りだもんな。それの倍となると…まぁ、そうなるか。」

呆れたように言うと、少しだけ雰囲気を柔らかくし、

「…会いたい相手がいることはとてもいいことだ。生きる理由になる。」

「先輩は会いたい相手は居るんですか?」

「いーんや、残念ながら。」

頭を振って手をひらひらさせて言う

「そーいえばパルフェ、大臣に呼ばれてたぞ。さっさと行ってこい。」

「え…そういうことは早く言ってください!?」

「悪い悪い。それじゃぁ、言ってらっしゃい。」


まるで妹のように私のことをかわいがってくれる先輩。

平凡な毎日はいつか崩れる。

真っ白な紙の中に黒く、細い字で


白狐が黒になる時…

王家は滅びゆ


と書かれた手紙がパルフェのもとに届いたのはまた別のお話で。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

はずれスキル「採掘師」をひいた俺は世界を見返す! 美澪久瑠 @mireikuru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ