一般人、天才を知る

 結論から言うと、俺はしっかり負けた。奥義の剣をしっかりとらえて防ぐことはできたのだが、木剣を吹き飛ばされてしまった。これでは負けを認めるしかない。


「剣を握って一日って本当か? この分なら剣帝アルゲナ・アブルスにすら届きかねんぞ」


 アルバさんが俺の剣を見てそんなことを言う。剣帝アルゲナ・アブルスな。「じぇねしす☆くらいしす」の中でも名前だけしか登場はしてないが、『五帝』として最高クラスの地位を持っている人物だったはずだ。


「そんなことは無いと思いますよ」


 これはマジで謙遜でもなんでもない。目指すところではあるが、マジで『五帝』は段違いだ。


 「じぇねしす☆くらいしす」作中に唯一登場する『五帝』の1人、槍帝オファー・スターゲイズはレベル99四人で挑んでなお、かなり運が良くないと勝てない相手だった。彼は全然本気ではないというのに。


 推奨レベル99エネミーのもう一人は彼の事だった。まぁ俺の方が圧倒的に難易度が低いんだけどな。


 だって二人で倒せるし。


「謙遜するなよグラン坊ちゃん。とりあえずレイド坊ちゃんとも戦ってみるか」


 なにがとりあえずなのかはわからないがもう一人の兄であるレイド兄様とも戦うことになったようだ。


「よろしくね、グラン。アレンが本気で戦ったみたいだし、僕も本気で戦おうかな」


「お、お手柔らかにお願いします」


 レイド兄様と向き合って思う。彼、本当に14歳なのだろうか。その構えは呆れるほどまでに洗練されている。


 その構えは<騎士流剣術>。<騎士流剣術>には4種類の構えがあり、その中でもレイド兄様が今行っているものは習得難度が最も高いものだ。最強の構えといってもいい。


 それが様になりすぎてる。本来ならば様々な戦いを潜り抜けた歴戦の騎士が使うような剣術だぞ。


「じゃあ、行くよ」


「はい! うっ!?」


 始まった瞬間に俺は腹を打たれていた。早すぎ! 容赦なさすぎ! 痛すぎ!


 俺が心の中でレイド兄様に対する抗議を述べていると、アルバさんから声をかけられる。


「まぁ、レイド坊ちゃんが本気でやったらみんなそうなるから安心しろ。14歳でAランク冒険者並みの強さしてるのはレイド坊ちゃんだけだ」


 Aランク冒険者並みですか。そうですか。


 天才じゃん。まごうことなき天才じゃん。正直ここまでだとは思ってなかった。


「年の差も結構あるからね。グランが14になったら僕より強くなると思うよ?」


 レイド兄様が俺をフォローしてくれる。優しいなぁ。


「俺なんてうかうかしてるとグランに越されそうだぜ。もっと努力しないとな!」


 アレン兄様もそんなことを言っている。俺も頑張ろう。とにかく、<暗帝流剣術>の再現度を高めなくては。


◇◇◇


 その後、二人の兄様は相変わらず模擬戦をするようだったが、俺は魔法の訓練をすることになった。


「グラン様に魔法をお教えすることとなりました。ランバート家お抱え魔導士筆頭、ミレニアと申します」


 俺の魔法の訓練についてくれたのは美人なエルフだった。大きな帽子とローブのTHE魔法使いみたいな美人さん。実にいいね。


「ミレニアさんですね、よろしくお願いします」


 俺はこの人がウチの筆頭魔導士ってことを知らなかった。そういえばウチの筆頭魔導士って普段は引きこもってるんだった。なんで出てきてくれたんだろうな。


「では早速グラン様の魔法適性を確かめたいと思います。こちらの水晶に手をお願いします」


 そういってミレニアさんが取り出したのは占いとかで使いそうなでかい水晶玉だった。これで魔法適性が分かるのかな? 「じぇねしす☆くらいしす」ではこんなシーンはなかったが、異世界って感じがしてすごくいいと思う。


 でもまぁ……。


「その必要はないと思います。適性なら自分で理解してますから」


 そういって俺は右手に闇の球体を作り出して見せた。


「闇魔法! これは珍しい……それに自身の適性を理解なさっているとは。たまにいますが天才の類ですね。貴族らしく魔力量もすでに私より多いので、うまく扱うことができればSランク級すら超えて魔帝メリッサ・ミスチャンス様にも及ぶかと」


 なに? 『五帝』と比肩するかもしれないってお世辞流行ってるの? というか魔力量、俺もうこの人より多いんだ。


 後から聞いたところ、魔法は技術によって消費する魔力量が大きく変わるそうなので、技術の方が重要らしい。ミレニアさんはその点においてとても優れていて、魔力量はそこまで多くないながら、最上位の攻撃魔法以外はいくらでも使えるのだそう。だから筆頭だそうだ。


 主人公たちは一定の魔力で魔法使ってた気がするんだけど。まぁこればっかりはゲームと現実の違いというほかないな。


「早速攻撃魔法の練習をしましょうか。一番訓練になりますし」


 攻撃魔法、「じぇねしす☆くらいしす」て覚えた物がどれだけ使えるか、とても楽しみだ。


 ◆◆◆


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恋愛ゲームの裏ボスに転生したから裏ボス超えて『最強』目指す ニア・アルミナート @rrksop

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