幸福な日々へ

暁 夜明

第1話

 スマホの通知が鳴る。

 時計を見ると、二十四時を指していた。

 こんな深夜に?一体何かと思い、通知を開いてみると、思わず乾いた笑いが漏れてしまった。


「はは、そうか。良かったな」


 ―My BIRTHDAY!-


 いつかの僕が登録した、今となってはただ死に近づくカウントダウンの通知だ。





 僕は、失敗をした。大学デビューに。親との折衝に。友人との付き合いに。

 思えば、どれが最初の失敗だったのかは分からない。だが、どれか一つを皮切りに、僕の噛み合っていた歯車が突然牙をむいて僕を磨り潰す万力へと変化した事だけは覚えている。

 大学に通うとなって一人暮らしを始めたこの家も、親の脛をかじりなんとか家賃を支払ってもらいながら、ゴミに埋もれて沈むのを待つ日々だ。ただ、陽の光などとうに忘れてしまったであろう人工の観葉植物と僕だけが、PCモニターの光を享受している。

 ゴミ溜めの中で何も生まない日を過ごすこの人生は、幸福はどこにもないが苦痛も無い。それが、猶更僕を苛み続ける。

 もちろん、そんな自責の念など、誰に話したところで格好つけの言い訳にしか聞こえないだろうし話すつもりもないけれど。


「決めてたしなあ」

 諦め、というか、まあ、僕なりのけじめなんだろうか。今はただ決めてたことを行おう。

 いつからあるかわからない水のキャップを開け、腹痛の心配が頭をよぎり思わず一人笑う。



「おやすみ」

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幸福な日々へ 暁 夜明 @akatsuki_yoake

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