11/30 雲壌

青空は遠く、雲が点々と流れていく。

実に穏やかな日だ。この世界に生首がいたとは思えないくらい、平和な日だ。


子どもたちの声が風に乗って響き渡る。

遊具で遊ぶ子どもは純粋無垢そのものだ。


昔はああいうふうに遊んでいたこともあった。

遊具を上ったり下りたりして、走り回った。

夕暮れの鐘が鳴ったのを聞いて、家に帰ったのを思い出す。


針のような小さな痛みが心を刺す。

ある日、突然いなくなって、どこを探しても見つからなかった。

地下にいるんだから、見つかるはずもない。


俺がいながら、生首に執着した理由はなんだったのか。

何を考えながら過ごしていたのだろう。

どこで人生の歯車が狂ったのか。それを知ることはもうできない。


「本当にいい天気だな」


あの生首は彼女の異常性に気づいていながら、付き添っていた。

正気に戻すことよりも、可愛がられることを選んだ。


あそこにいて幸せだったのか、今になっては分からない。

俺は缶コーヒーを投げ捨てて、公園を後にした。

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#novel首塚 長月瓦礫 @debrisbottle00

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