本作品は、現代社会に実在するような過激思想をモデルにしつつ、フィクションとして昇華させた問題提起型の意欲的な物語である。同級生のミヤシタの言動への主人公の心理描写を通して、読者に過激思想の是非を考えさせる。作中に登場する「マナビスト」という架空のカルト思想を通して、ミソジニー(女性に対する憎悪や嫌悪のこと)や陰謀論の危険性を浮き彫りにしている点が秀逸である。そうした極端な思想に心を蝕まれているミヤシタに対する、主人公の心理描写は実に克明な作品だ。