季節の商人

トマトも柄

季節の商人

暖かく、桜が舞い散る季節がやって来ました。

それは春です。

商人は季節の始まりを眺めるように見ました。

そして、商人は息を吸い込んで、吐いてを繰り返していました。

「よし! やるか!」

商人の仕事が始まりました。

商人は紙を見て、お客の注文を確認します。

紙の内容を確認して、文字を読み上げます。

宛先は森に住むクマからでした。

『最近冬眠から目を覚ましたのですが、森に取れるものが毎回同じで味に飽きそうです。 何か変わった食べ物を持ってきて欲しいです。 気に入ったらサケを渡します』

手紙の内容を商人は読んでいきます。

そして、商人は立ち上がり、

「行ってくるか」


商人は森に向かい、クマに会いました。

「手紙をくれたのは君かね?」

「はい。 そうです。 何か変わった食べ物が欲しくて手紙を出したのですよ。 何かありますか?」

「これはどうかね?」

商人はクマにドングリを見せました。

すると、クマは、

「えぇ〜。 ドングリ〜。 いつもドングリは食べているよ。 もっと変わったのはないのかい?」

「このドングリを食べてごらん。 このドングリはとても変わった味がするから」

クマは渋々ドングリを受け取り、食べました。

カリコリカリコリとクマは音を立てて食べています。

すると、クマの表情がどんどん変わっていき、食べ終わった頃には目を輝かせて言いました。

「このドングリ、とても甘い! 甘いし、何か変わっている! 口では説明できない美味しさがある! もっとないのか!?」

クマの言葉に商人は笑顔で答え、持ってきたバッグごとクマに渡しました。

「そんなことがあろうかと、この中に一杯詰めてきたぞ」

「ありがとう。 お礼にサケを渡すよ」

そう言って、クマは魚のサケを商人に渡した。

商人は笑顔で受け取り、

「ありがとう」

商人は森を去りました。

商人はとても喜びました。

クマがとても笑顔になって喜んでいたからです。

商人は思いました。

ドングリを持ってきてよかったと。



春が過ぎ、とても暑い季節になりました。

商人は汗だくになりながら、商売をしています。

すると、商人の元に一通の手紙が届きました。

その手紙にはこう書かれていました。

『私は砂漠に住んでいるラクダと言います。

私は普段草を食べているのですが、どうも最近のは不味くて仕方ありません。 美味しい草があるのなら欲しいです」

手紙を読み、商人は汗を拭きながら、

「よし、行くか!」

商人は砂漠へ向かいました。

砂漠はとても暑く、汗を拭いても拭いても止まりません。

商人はラクダに出会い、

「あなたが手紙をくれたラクダさんですか」

「はい。 そうです」

「美味しい草が欲しいのだね?」

「そうです! もしかして持ってきてくれたのですか?」

「はい。 もちろん」

商人はバッグを開け、ラクダに草を渡しました。

ラクダは草にかぶりつき、

「すごい! この草、シャキシャキして美味しい!」

ラクダは草をシャキシャキシャキシャキ音を立てて食べていました。

ラクダは草を食べ終わり、満足そうに商人にお礼を言いました。

「とても美味しかった! ありがとう」

「いえいえ、これが商売ですから」

「お礼にこの水筒を渡しましょう」

そして、商人はラクダから水筒を貰い、砂漠を後にしました。

商人の顔は笑顔で満たされていました。



そして、暑い夏が過ぎ、落ち葉が目立つ季節になりました。

商人は落ち葉の掃除をしながら、商売をしていました。

すると、一通の手紙が届きました。

『私は町に住んでいる木です。 最近、雨が降らなくてノドが渇いているのです。 美味しい水を届けてくれませんでしょうか?』

商人は手紙を読んだ後、急いで落ち葉の掃除を終わらして、

「よし、行くか!」

商人は町へ向かいました。

町はとても綺麗で、木から落ちる葉っぱもとても綺麗で景色の一部になっていました。

商人は木に出会います。

「手紙をくれたのはあなたですか〜?」

商人は見上げて、木に話しました。

「そうです。 私です」

「美味しい水が欲しいのですね?」

「そうです。 ノドがカラカラで今すぐにでも欲しいです」

「よし。 直ぐに飲ませてあげよう」

商人は水筒を開け、木に水をやりました。

木はゴクゴクゴクゴクと水を飲みました。

「とても美味しい! この水はいい水だ!」

木はとても喜んでいます。

「それは良かったです。 喜んで貰えて何よりです」

商人は木に笑顔を向けて言いました。

「とても美味しい水を貰ったお礼に木の枝をあげよう」

商人は笑顔を向けてこう言いました。

「ありがとう」

そして、町を去りました。



季節は過ぎ、秋が過ぎ、寒くて震える季節がやってきました。

商人は震えながら、商売をしています。

商人が震えている時、一通の手紙が届きました。

『私は雪国で暮らしているトナカイです。 最近、何かを噛まないと落ち着かないのです。 噛んでも折れない木の枝が欲しいです。 ありますでしょうか?』

商人は厚手の服を着て言いました。

「行こうか!」

商人は雪国へ向かいました。

雪国はとても寒く、常に体が震えるほどでした。

けれど、商人はトナカイのために一生懸命雪国を歩いて行きました。

そして、トナカイに出会いました。

「君が手紙をくれたトナカイかい?」

「そうだよ。 僕の手紙を読んでくれたのかい?」

「そりゃあ、もちろん。 だから来たのだよ」

商人はトナカイに向かって笑顔で言いました。

「もしかして、木の枝を持って来てくれたのかい?」

トナカイは言いました。

「もちろんだとも。 噛んでも折れない木の枝を持って来たよ」

商人はトナカイに木の枝を渡しました。

トナカイは木の枝をくわえてカジカジカジカジと噛んでいます。

トナカイがいくら噛んでも木の枝は折れることはありませんでした。

「これはすごい! いくら噛んでも折れないや! ありがとう!」

トナカイは喜びながら言いました。

「気に入ってくれて良かったよ。 私は商人だから皆の欲しい物を渡すのが仕事なんだよ。 喜んでくれてなによりだ」

商人は笑顔で言いました。

すると、トナカイは、

「お礼に家まで送るよ。 商人さんはソリに乗って」

そして、商人とトナカイは家まで向かいました。

そして、家に着き、

「ありがとう。 送ってもらって」

「いやいや。 いいんですよ。 とても良い物を貰ったお礼です」

トナカイはお礼を言って、家から離れて行きました。

シャンシャンシャンシャン音を鳴らして雪国へ帰って行きました。

商人はトナカイを見届けていました。



そして、冬が過ぎ、また桜の舞い散る季節がやって来ました。

商人は今まで喜んでくれていたことを思い出のように思いながら、静かに過ごしていました。

今まで喜んでいた者達が目を閉じると鮮明に思い描かれています。

春にはクマが、夏にはラクダが、秋には木が、冬にはトナカイがとても喜んでくれました。

喜びは幸せを呼ぶ。

少なくとも商人はそう考えていました。

幸せは喜ぶこと。

それが、商人にとっての喜びなのです。

喜びは喜びを呼び、幸せを呼ぶ。

その喜びを呼び込むために商人は商売を始めたのです。

きっと、みんなは欲しい物がある。

だから、私がみんなの欲しい物を持って行き、みんなの喜びを分かち合う。

商人は喜びを得るためにこの仕事をしているのだということを考えていました。

そして、考えている内にいつものように一通の手紙が届いたのです。

商人はその手紙を読み、その欲しい物をバッグに詰めて、店の入り口でこう言いました。

「さぁ、行くか」

商人は出掛けて、次の目的地へ向かいました。

それは欲しい物を届けるためです。

商人は喜びを渡しに行くために今日も行きます。


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季節の商人 トマトも柄 @lazily

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