二、気持ちの行方
第8話
電話を切ってから、わたしは戸惑っていた。告白されたような? そんな雰囲気があった。
毎朝、わたしを見ていたのは、そういう意味だと捉えていいんだろうか。
勘違いかもしれない。うぬぼれてるのかもしれない。そんなふうに考えてしまう。
土曜日、わたしが話をして、及川くんを傷つけないだろうか。わたしが、かつて鳥生くんのことで、少なからず傷ついたように。
どれくらいの熱量で、ひとを好きになれば、それが恋愛だとか、恋だとかに相当するんだろう。
わからない。
友達といっても――
男子と女子で友情が成立するのかな?
お兄ちゃんなら、そういうのがわかるかな。
でも、わたしを困らせてる及川くんを怒るかもしれない。だったら、相談できない。
瑛美里には、言えない。言いたくない。
恋がよくわからないから。
だから、付き合うとか考えたくないし、好きになる努力も違うと思う。
わたしは、わからないなりに、便せんに今の気持ちを及川くんに向けて書いていくことにした。
伝えられなくなれば、それを読んでもらえたらいい。
次の日の朝、駅に向かうと、いつもの場所に及川くんはいなかった。
電車の時間を変えたのかもしれないし、学校を休んでいる可能性もあった。
心配だな……
わたしが心配しても、状況わからないんだよね。
ぼんやり考えていると、二番線に着いた電車から、トキ高の男子が何人か降りているのが見えた。
そして、わたしに向かって手を振っている。
そっちに行くからそこで待て、というのを身振り手振りで現しているようだった。
階段を駆け降りて一番線に現れたのは、里中くんだった。
「及川が風邪ひいたらしい。でも、学校は休めないはずなんだよな。紗月ちゃん、何か知ってる?」
「学校を休めない? どうして?」
「地元の高校じゃなくてトキ高に通うなら、一日も休まずに通学するって、親父さんと約束してんだよ、あいつ。家が自営業だから、約束守らなかったら高校やめて工場を手伝えって、親父さんには言われてるんだと」
昨夜、電話切ったあと、何かあったのかもしれない。
「里中くん、及川くんの家の住所、わかる?」
「知ってる。でも紗月ちゃん、どうするんだよ。今から学校だろ?」
「……サボる。瑛美里に伝えてくれる? 休むからうまく言っといて、って」
「何か考えがあるんだな? だったら任せろ。すぐに電話しておくから!」
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