第27話 休暇
「見つけたーー!!」
無駄に広い倉庫に響き渡るほどの大声で少年は叫んだ。
おめでとうさん。
「で、それ、いい酒なのか?」
「さあ?うーん、ビールかな。後で開けてみよっと」
お酒の入った瓶をまじまじと見つめた少年は、ふっとこっちを見た。
「何かいいのあった?」
「あるわけないじゃろ」
「ウェイリルじゃないんだからね」
「あら残念」
所詮はガラクタしか残っていない倉庫だ。
有用な物はすでにお偉いさんが回収済みなので、正直異臭のする空間でしかない。出たい。
「ねえこれは?」
「ああ、たしかばいくというものだ。いつかの遠征の時に誰かが言っていたよ」
ご存じ、バイクのことだ。
エルナードという国は、魔法に国の全てを費やしているため、それ以外の技術に関しては乏しい。
移動手段についても、よくて馬車が使える程度。
少女達がバイクを知らないのも、さすがに必然だ。
「二人乗りの移動手段さ。走るだけで後ろから異臭を吹き出すんだ。とてもじゃないけど、有用な物ではないね」
言い方に語弊があるぞ。排気ガスと言え。排気ガスと。
「へーでもなんか楽しそうだね」
「イリスは乗れるのか?」
「まあ。その時に一度試させてもらったからね」
へえ?と言って、酒豪少年がなにやらにやっと笑った。
休暇を潰す算段はたったみたいだ。
――――ちびっ子三人衆の休暇 会話だけでお届け
「きゃはーー!!!ねえリーセル目開けてる?横、海だよ!」
「う、うるさいわ!吹っ飛ばされたらどうするんじゃ!」
「ねえ僕の気持ちも考えている?今必死なんだけど」
「な、こらっ!ウェイリル!機体を揺らすでない!倒れたらどうするんじゃ!」
↑
バイクは、大きめのサイズだったらしく、華奢な三人衆なら、余裕で三人乗りできたようだ。
エルナードは、国の南側が海に隣接している。
エルナード城は国のちょうど中心に位置しているが、三人衆はこの休暇を利用して、南側に遊びに来ているのだ。
運転のできるあざと野郎がハンドルを握り、
吹っ飛ばされまいと少女はあざと野郎に必死でつかまっている。
その少女に、背中を合わせるように座って足をブラブラさせているのが酒豪少年だ。
「ねえリーセルー!いつも爆速で空中飛行してるのに、なんでこの程度の速さが怖いんだいー!?」
「うるせえ!なんか違うじゃろ!分からんのか!」
バイクの排気ガスの音と、騒ぐ酒豪の声に遮られながらも、あざと野郎が煽ってきた。抜かりないな。
「ねーイリスー。そのお肉とボクのピーマン交換してくれない~?」
「えー野菜も食べなよ」
「やだ~」
「なんじゃ、おぬしら好き合ってるのか?かまわんぞ。ワシは同性愛については肯定的な考えを持ってるつもりじゃ」
「思考がぶっ飛んでるぞ。それに、なぜリーセルは、ここに来てまで正座で紅茶なんだい」
「ん?これがワシのベストスタイルじゃからな!」
「もったいな~お肉いらないの~?」
「おいイリス、酒豪が既に酔ってるぞ。世話は頼んだ」
「いやだね。誰がそんな事喜んで引き受けるのさ」
「あー火消えてる~リーセルー」
「はいはい。火鳥」
↑浜辺でバーベキュー中のちびっこ三人衆。
仲良く交換しあっている少年二人に、意味不の思考を持っている少女。
その少女本人は、レジャー用の椅子に正座をしながら紅茶を嗜んでいる
の図。
「リーセル早く!火つけてよ!」
「馬鹿!ちょっと待て!僕はまだ離れてないぞ!」
「ったく、ワシの餅魔法を一体なんじゃと・・」
「ねえイリス怖がりすぎ~綺麗だよ~」
「お、音が大きすぎるんだ・・」
「ほー、中々綺麗なもんじゃなー」
「「リーセルは離れてなさ過ぎ!」」
「これ、真下から見たときの形はどうなっとるんじゃ?」
「リーセル!早く離れろ!」
↑浜辺のお店で花火が売っていたため、初挑戦中の三人衆。
音がでかすぎるというガキ思考のあざと少年。
まだ酔ってる酒豪少年。
下からの模様が気になって真下に入り込む少女。
の図。
「ねえせっかくなら、どこかに泊まっていくとか無いのか?」
「いいじゃん~三人とも飛べるんだからさ~」
「おー気持ちいいのー夜風というものは」
「いいけどさーって、ねえ、その状態のまま背中から地面に落ちても知らないよ?」
「ああ、ワシのことは別にいいんじゃが、おぬし意外と手厳しいな」
(酒豪の、悲鳴なのか楽しんでいるのか、よく分からない声が響く)
「・・・世話を任せたのは君だよ」
↑泊まるという思考はなく、空をゆっくり飛びながら帰る三人衆。
普通に飛んでるあざと少年と、
酔いを覚ますためにあざと少年にそこらへんをぶっ飛ばされている酒豪少年、
仰向けになって久しぶりにゆっくりと空を飛ぶ少女。
の図。
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