第23話 ちびっ子三人衆

「すまん、遅くなったな」

小走りでやってきた少女を見つめる少年二人の目は怖くなかった。

「今に始まったことじゃないさ」

「どうやら、朝に弱いのは直ってないみたいだね」

「う、すまんかったな」

酒豪少年の言葉に拍子抜けしたように、少女は言葉に詰まった。


少女とその兄二人、のような構図で、三人は出発した。



「ところでおぬしら」

「なんだい?」

「貴様ら二人とも風龍だな」

健康診断で見たような、キモい何かシリーズの一員を前に、少女は目線をそらさず言った。

「生憎ね。相性が壊滅的なことを忘れていたよ」

すなわち、直接的な攻撃魔法になりにくい属性が二人もいるということだ。


――――風属性魔法、またの名を風龍

汎用性が高く、他属性と合わせやすいが、殺傷能力に欠ける。

能力次第ではあるが、前線よりは援護に回ることが多い。


結果が分かりきっていた自身の問いに、少女はため息をつくと、荷物を空に放り上げた。

「ワシが前衛だろうな」

「よろしくー」

「遠距離攻撃は僕がいく」

「おっけー」


リーセルが槍を構えたのを合図に、少年二人も位置についた。

少女が光を纏った槍で軽く攻撃を入れると、

怯んだ隙に、あざと少年の遠距離からの斬撃が敵に刺さる。

空中からの落下攻撃に踏み切ろうとした少女に、すかさず酒豪少年が少女の足下に風域をつくる。

飛び上がった少女は、自身の周りに無数の光の矢をつくり、それと共に攻撃。

直後に、酒豪少年の弓矢と、あざと少年の斬撃が数発入れば、あっさりとキモい何かは倒れた。


「おおお、ナイスじゃったぞ、風域」

珍しく満足のいく共闘だったみたいだ。

「僕のは邪魔だったかい?」

「いや、そんなことないぞ。無くても勝てたけどあったからよかった」

「フォローの仕方が酷いな。ウェイリルー」

「わーほら、よしよしー」

あ、あざとい・・。というか、酒豪少年になつきすぎなんじゃないか?

「おぬしも大概じゃな」

半場呆れたように、少女は酒豪少年に声を掛けた。

「リーセルは単独任務ばかりだろうけど、ボクたちは二人での任務が多かったからね。その時はイリスがアタッカーしてくれてたし」

ムスッとするあざと少年をよしよししながら、酒豪少年は平然と答えた。


「そうか、ならワシも誘って欲しかったもんじゃな」

「なら、次からはリーセルにも逐一声を掛けるよ」

酒豪少年はくすっと笑った。

「リーセルもさみしがり屋だよねぇ」

酒豪少年に構ってもらっていたはずのあざと野郎は、すかさず、にやっとした笑みを浮かべていた。

「おぬし、自分のことを見てから言った方が良いぞ」

「ざんねーん。僕は普段からウェイリルと一緒なんだよ」

「甘え放題というわけか。羨ましいもんじゃな」

「あれ?リーセルも寂しくなっちゃった?」

少年二人にいいように煽られた少女は、バッと赤面した後、空中に投げていた荷物を回収して歩き出した。

少年二人も、顔を見合わせて笑うと、少女について行った。

もしかしたら、兄二人に妹一人じゃなくて兄一人、妹弟二人かもなあ。

下手したらちびっ子三人衆かな。

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