第22話 再会

「なんじゃおぬしら、まだ生きておったのか」

「ふっ、随分な物言いじゃないか。僕がそこらの戦場で野垂れ死ぬとでも思っていたの?」

学内では珍しい和装に身を包んだ少年が答えた。

「いや、別にそうは思っとらんが」

「君も元気そうで何よりだよ、リーセル。活躍の声は聞くのに、学内で全く見かけないから心配していたんだ」

今度は少女のような顔立ちをした少年が言った。

「う、ま、まあ忙しくしとったからのお」

図星を突かれた少女はしれっと答える。


「あら、君たち、知り合いだったのね」

「ずっと前からの友人なので。クリレアさんもお久しぶりです」

(友人いたんだな。安心したよ)

「君も相変わらずね。じゃ、詳細はリーセルに話してあるから、明日から早速、よろしく」

淡泊に言い放つと、クリレアと呼ばれた女性は瞬間移動魔法を施し、どこかへ飛び去った。



少年少女三人は中庭に出てきていた。

「明日からって。あの人、随分とこき使ってくれるね」

和装の少年・イリスは肩をすくめながら言った。

「でも二人とも、学校が休めてラッキーなんじゃない?」

ほぼ少女の少年・ウェイリルが言うと、

「「うっっ・・・」」

少女と少年は図星を突かれていた。

安心した。少女が楽しそうだ。



「ま、大体そんな感じじゃな」

中庭の椅子に腰掛けながら、少女はクリレアからの説明をザックリと話した。

「結構長い道のりになりそうだねー」

女少年は、何かを入れた木筒を口にしながら答えた。


「何を飲んどるんじゃ?さっきからずっと」

「お酒でしょ。見た目に反して酒豪だね。一口頂戴」

女少年の肩にトンっと顎を乗せると、和装少年が言った。こっちは意外にもあざてぇ。

「そういえばそうじゃったな。リキュールか?」

少女は、目を細めた柔らかい笑顔で尋ねた。

「いや、リンゴ酒だよ。今はこれにハマってるんだ」


「お、ならワシも一口貰おうかの」

意外な発言をした少女に、酒豪少年は煽り腰で答えた。

「大丈夫ー?リーセル、意外とお酒弱いじゃん」

「問題ないぞ。果実酒ならばアルコール分も少ないじゃろ」

えっへん。と腰に手を当て自信満々に答える少女を余所に、間髪開けず、あざと少年が返した。

「あ、ごめん。飲み干しちゃった」

「あ?」

またも少女がガンを飛ばしたと思ったそこの貴方。

今回は違います。

「ボクの貴重なリンゴ酒を飲み干してんじゃねーよ。一口って言ったよね君。今日学校に持ってきてるのはこれで最後だったんだよ?イリスだからあげたんだよ?ねえ?」

着物の袷を掴んで前後に振りながら、あざと少年を問いただしていたのは、酒豪少年だった。


普段、物腰穏やかな酒豪少年の行動に驚いたらしく、表情、動き共に固まっていた少女は、その拘束から解かれた瞬間、声をあげて笑っていた。

「wwwにあわ、似合わんwwおぬし、そんなタイプじゃなかろうにww」

怒る酒豪少年と、ごめんってーと、軽く返すあざと少年を除く、中庭にいた全ての人が少女の笑い声に硬直した。


僕だって驚いたぐらいだ。僕と二人の時でも、嘲笑う程度の微笑み、それ以外の場所でなんて、笑った表情すら見せてこなかったであろう少女だ。

口元に軽く手を当てながら、ケタケタと笑う少女に気づいた少年二人も、周囲の全員が硬直しているのに気づいたみたいだった。

「君、そんなにも人前で笑顔を見せてこなかったんだね」

「wwん?なんじゃ?」

「ううん。リーセルが元気そうで良かったねって話」

「そうか?ワシも、おぬしらが元気そうで良かったと思うぞ?」

少女はわざとか本心か、疑問を浮かべた表情を浮かべた。

「そう」

あざと少年も何やら物思いにふけた表情で少女を見つめると、パンっと手を合わせた。


「そろそろ任務の話をしないといけないんじゃないか?」

「そうだね、雑談がかさんじゃった」

「では持ち物チェックから始めるぞ」

「「りょーかい」」


アーイスー

ボクはリンゴ酒必須~

僕は、そうだね、特に、

北部地域じゃぞ?

・・・防寒具。

ワシもー

ボクはいらなーい

ウェイリル、裏切り者めが

なんでそうなるんだよ

まったくだね。暑がりの気持ちは分からないものだよ



母性が生まれそう。少女が笑っている。

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