間章 健康診断の少女

第15話 第二章と間章を跨いでます。

遡って王宮広間。


「王宮結界にその性能があったというよりは、王宮結界の消失に伴ってこちらが変化したというのが妥当だ。80点」

「今点数などどうでも良い。いい加減保護者面するでないぞ」

「これは失敬。今や国の誇る虹翼様にする発言では無かったかな」


さっきから僕は黙って聞いていたけど、リーセルが彼と面識があったことは正直驚きだ。

僕は彼のことを知っていただけに過ぎなかったけど、ロリ時代からということはかなり小さい頃からの付き合いということだ。

まあそれも今はどうでも良いことか。


「王宮結界の効果が単にシールド効果だけで無かったのは知っているだろう?」

「ああ。霊塔の神像ほどではないが、それに匹敵するだけの回復効果が付属していると」

「そうだ。だが、それは国民の周知の事実としてだけ伝えられる上辺の性能に過ぎない」

「まだ性能があったと言うことだな?」

彼は誇らしいといわんばかりの表情で答えた。

「ご名答。王宮結界には万物の攻撃を通さない守備に加え、神像に匹敵する回復効果、そして、結界内を一定に保つ効果、結界内の者にバフを掛ける効果がある」

「結界内を一定に保つ効果、とバフ?それが今回の状況を招いているということか」

「そうだ、本来、君以外の魔法使いは霊気が安定していないものだ。常にバフの恩恵を受けた状態でそれが一定に保たれていたということだ」

「そして結界の消失した今、その反動で通常時以下の霊気量にまで落ち込んでいる・・。なんと馬鹿げたものだ。バフに頼りきりになった結果、みすみす本来の力まで失うとは」

いかにも呆れたと言うように少女は肩をすくめた。


「バフが消えたとしても一定期間はそのバフも余波が残る。しかしそれが無いということは、副作用として結界の消失と同時に、多くの霊気が共に消失したといった所だな。今我々が解明できるのはここまでが限界だ」

と言うと、自信満々に言ったにも関わらず、じいさんはこっちに何か言いたげな視線を送って来た。

「なんじゃ、ババアをこき使うでないぞ」

「いやいや、ただ、きっともう今日は学校に行く気はないんだろうと思ってな」

((ぎくっ))


「・・・なんじゃ、言ってみい」

「健康診断、行ってこい」

「ウガッ」

「魔法使いは全員受けないといけない三ヶ月に一回の健康診断。お前何回ブッチしてると思ってる」

「えーーと、」

「通算15回だ」

「まさか弁明の時間すらくれないとは、おぬし本気じゃな」

ほう、と声を漏らしながら少女はじいさんを見返した。

(こいつ、もしかして本当の馬鹿か?)


「こんにゃろう、分かった分かった。健康診断なんざ行かんでもワシは健康体じゃってのに」

「自分でババアと言いながらなぜそんなに自信があるのか。はあ」

「だってあれ、健康診断と言う名の技術測定じゃろ。何やら色々しやがるし」

「その膨大な霊気がいつか爆発しても知らないぞ」



そして時は戻り現在。

ベッドでぐーたらしていた暇人(少女)を起こしてエルナード城の地下に来ていた。

通算15回ブッチ中の健康診断に来ている。


身長、155㎝ チビ。

体重、37㎏  は?

視力、右0

   左1.0 でしょうね。

最重要3点が撃沈、健康体とかどの口が言ってやがる。

身長は置いといて、なぜマヨラー、お菓子大好きのこれが体重37㎏になるんだ。

「虹翼さん、また体重減ったでしょ。ご飯食べてないの?」

「んな訳ないじゃろ。減る理由はワシにも分からん」

本当に分からないから不思議だ。小食ではあるけどそこまでか。

「視力に関しては?あなたはこれで問題ないのね?」

「うむ、右目はもう機能しとらんからな」

灰色となった右目を隠しながら少女は答えた。

「了解、異常は体重だけっと。じゃあ次の部屋行ってね」

「はいよ、どうもどうも」


結果と、「体重に問題あり」と書かれた紙をもって次の部屋に向かう。

「その点、僕は優秀だね」

「酷使しているというのに、不思議なもんじゃな」

「第一、僕までやばくなったらそれこそリーセル終わるよ」

「・・・否定はせん」

少女は、これだから来たくなかったんじゃ。とため息をつきながらとぼとぼと次の部屋へ足を進めた。





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