第13話 王宮結界編 ー始ー
「生きとるかー!暇人ども!」
(馬鹿!盛大に大門開けて叫ばないで!)
「少しは口調に気をつけたらどうだ、リーセル」
「おお!ジンさんか!なんじゃ他のじいさん達も、相変わらず暇そうじゃないか。お兄さんと急いで損したぞ」
「お前はこの状況のどこを見て暇だと思うんだか」
(呆れるよな)
(突然来てリンも失礼じゃなおい)
「聞いたとは思うが、王宮結界が破壊された」
一旦リーセルを落ち着かせ、贅沢にも紅茶が出てきたところでじいさんが切り出した。
「それじゃジンさん!何百年も前に何やら凄い結界術師がかけとったやつじゃろう?何故それが今になって!」
「こっちも分からないんだよ。突然のことで把握が追いついていない。結界がどうやって破壊されたのかも分からず終い、リザーブたちまで瀕死の有様だよ」
(で、なんでリーセルを呼んだのか聞かないと)
(おおそうじゃった)
ギロッ
?今このじいさん僕のこと一瞬・・・
「君を呼んだのは、君に王宮結界の張り直しとエルナード城の警護を頼みたかったからだ」
「ん?おおよくワシの聞きたいことが分かったのお。流石、ロリの頃からの付き合いじゃからかの!」
リーセルは鈍感か気を利かせてか、じいさんの背中をバシバシしている。
「それで、王宮結界の張り直しとぬし言ったようじゃが、それならそこらへんのじいさん達の方が専門なのではないのか?」
「それも事実だ。君は兵魔術師の教育しか受けていないだろうからな。だが、この状況を見た者ならその理由が分かるだろう?」
僕とリーセルは広間を見渡した。
さっきのリーセルの馬鹿発言が勿論事実な訳はなく、お偉いさん達はバタバタと慌ただしい。
忙しいからリーセルに?そんなことは無いはず。
多忙なリーセルとは違い、宮廷魔法使いとしてエルナード城を生業にしている彼らは人員も豊富で手は足りていると聞く。要は暇人だ。
結界師も専門職人として常駐しているし、なぜリーセルに・・。
と僕は悩んでいたが、リーセルは近くで資料を漁る一人の魔法使いをぼうっと見つめていた。
見つめる先の魔法使いは、服装と装飾からして、恐らく宮廷魔法使いでも上層の者、戦闘道具を持っていない事からするとシールダーかヒーラーか、そのあたりかな。
しかしそれがなんだっていうのか。
「リーセル?」
「まあ、まだ君には難しすぎたかな」
ふっ、と鼻を鳴らすじいさんを余所に、リーセルはぼそっと声を出した。
「・・・霊気が、脆弱すぎる」
「ほう?」
おじさんが楽しそうに笑みを浮かべている。当たりということか。
僕には霊気の強さを見極める技術は無い。
だが、リーセルは寸分細かな所まで霊気の強さを見ることが出来ると本人から聞いたことがあった。
「そこのエキスパ2級の結界師も、あっちの、エキスパ5級の司令官も、さっき飛んできたときに見かけた門兵や警備兵もそうじゃった。まさか、」
「ほう、分かるか。そうだよ君の想像通りだろう」
「なぜだ?王宮結界にそのような性能があると聞いたことはないぞ」
凄くどうでも良いことだけど、この忙しいときなのに王宮は妙に気前が良い。
このタイミングでお茶が出てくるとは。しかも少女の好みの紅茶+チョコレートを出してくるなんて。
さてはおだてることで、重い頼み事を緩和させるつもりかな。
チョロい少女はその手の簡単なアメですぐ調子に乗るからね。
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