第2話 リーセル

 見た目を裏切らない、子供らしい口調で出発の号令を掛けるその様子は、僕から 

 見てもかわいらしいものだ。やはりこれが学校の首席とは恐ろしい。


 そして小さな少女は、飛び降りた。その先は、ドアではなかった。



第二話 リーセル




今少女はどこに居るのか。天国、なんて考えはよしてもらいたいけど。


少女は今、空を飛んでいる。魔女なら当たり前の事じゃ無いかって?

まあ実際正解だ。少女は今、ほうきに乗って空を飛んでいた。


けれど、これが出来るのは魔法使い達の中でも少ない。

風の魔法使い、そして光の魔法使いの二種類の魔法使いだけだ。



エルナード王国には6種類の魔法使い達が存在している。

けど実際は、その種類以上に個々によって使える能力が全く違ってくる。


魔法使い達の魔法の源は「霊気」と呼ばれる物だ。

これを魔力に変えて魔法を使う、まあよくある設定だ。

その霊気の蓄積量やら魔法の属性やらで魔法使いとしての強さが決まる。

霊気の蓄積量が多ければ魔法の威力も大きい物になる。逆も然りだ。


そして霊気の蓄積可能量を大本に、次に6つの属性に分かれる。

全体の六割を占めるのが、無所属の魔法使い。

そして、風龍ふうりゅう火鳥かちょう水蛇すいだ草虎そうこ、と呼ばれる4種、この魔法全ての上位互換に立つ、虹翼こうよく


飛行が可能なのはこの中で風龍と虹翼の2属性だけだから、飛行魔法を使える魔法使いは希少ってことだ。




「おう!リーセル、今日はえらく早いじゃねーか、爆撃でも降ってくんのか?」

「おおカモメか。おはよーじゃ。今日はうちの学園の始業式だそうでな。故に起こされた」


現在、小さな少女は空を飛びながらがっつり鳥と会話をしている。この状況に僕は驚くべきなのだろうが、もはやこれも見慣れた光景だった。

リーセルの交友関係は地味に広いのだ。


「リーセル、今日は新入生への挨拶もあるんじゃぞ?立派であろ?」

「おうおうそうか。“虹翼様”も大変なもんだな」

はあ、いや、うちの主人はこんな人なんだ。よし、リンよ。諦めろ。


霊塔の横を通り過ぎ、行きつけの本屋の頭上を通過する。

最後に学園の寮を過ぎれば学園はもうそこだ。


「リーセル、そろそろ」

この速度でこのまま行くとどう考えても学校を通り過ぎる。いい加減それに気づいてほしいのだが、無駄な願望のようだ。

「おお、ではなカモメ、またなー」

「おう!挨拶頑張って来いよ!」



そして学校とこの距離になったところで毎日主人は、化ける。


カモメさんが去って行った後で僕は主人に問った。

「カモメさんには見せたりしないの?」



―――「この私をなぜカモメごときに見せないといけないの。面倒が増えるよ」


少女の口から、冷徹な声が漏れた。

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