91 壊すか壊されるか
地面に倒れるセティの両手を抑え込み、
遅れて、
二冊のやり取りを視界の端に収めながら、ソフィーは間合いを計りつつサンキエムに向かって駆ける。
「
水の針を生み出して、サンキエムに向かって放つ。
「
サンキエムがまた
「残念だったね。その程度じゃこの
楽しげに、サンキエムが笑う。ソフィーは防がれるとわかっていながら、それでも水の針を生み出して次々に攻撃を仕掛ける。攻撃しながら距離を詰める。
地面に落ちた
「もっと激しい攻撃にしたら? そしたら壊れるよ、きっと」
まるで
ソフィーは落ちている
そして、空中に水の針を生み出す。ソフィーの肩に乗っている蛙が、ぴょんと跳ねる。
「
サンキエムは慌てることなく、また
「
「
ソフィーの腕にしがみついていた
引っ張られてバランスを崩したサンキエムに、ソフィーはまた水の針を撃ち込む。
「
サンキエムは盾を生み出す。水の針は弾かれる。
ソフィーは
ソフィーを見上げて、サンキエムは笑った。
「その目、すごく怒ってるね。僕のこと、壊したくてたまらないって目だ。お前はやっぱり
「違う!」
ソフィーは真っ直ぐにサンキエムを睨んだ。強い意思が宿った視線に、サンキエムはわずかに眉を寄せる。
「確かにわたしはあなたに怒ってる! でも、それでも、あなたを壊したくて壊そうとしてるわけじゃない! あなたが
サンキエムは笑い出した。ソフィーはサンキエムへ向ける視線をより鋭くする。腕を強く引っ張る。
引っ張られる腕を引っ張り返して、サンキエムは笑いながら言う。
「それこそ欺瞞だよ。『壊したくない』『壊すのを止めたい』そう言いながら、結局壊すんだからさ」
ソフィーが思い出すのは、過去の探索で
使ううちに壊れてしまった
壊れてしまってもう取り戻せない──それらを思い出すとき、無力感と後悔がいつも共にあった。
ソフィーはサンキエムに向かって叫ぶ。
「結果的にそうなったことだってある! それでも! 本当は壊したかったわけじゃない!
だからわたしは諦めない!」
サンキエムは笑うのをやめた。冷たい視線が、ソフィーを見据える。
「無駄だよ。何を言おうが、お前は結局
サンキエムは引っ張りあっていた腕の力を緩めた。重心を後ろにとっていたソフィーはバランスを崩して後ろに倒れそうになる。
「
サンキエムは囚われていない方の手で、新たな
ぼんやりと光った
短剣を手にしたサンキエムが、バランスを崩したソフィーに向かって跳ぶ。
「
ソフィーは水の塊を自分の前に生み出す。サンキエムが突き出した短剣、その切先は水のなかに沈んでゆく。ソフィーはそのまま後ろに倒れ込んで、地面を転がってサンキエムから距離を取る。
サンキエムは解放された腕に掴んでいた
ソフィーは地面に手をついてさっと体を起こす。
「結局、壊すか壊されるか、それだけなんだよ」
「そんなことない!」
サンキエムの冷たい言葉に、ソフィーは大きく首を振った。
(そんな関係、悲しすぎる!)
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