終話 それから異世界

 俺はのんびりしていた。

 仕事おわりに部屋で缶チューハイ。天国とはここのことだ。

 あのとき、いったんもとの世界に帰れはしたが、リオラとやらに送り戻された。魔力を捨てたとはいっても、魔王だしな。置いとけないよな。そりゃそうか。

 俺にとってはラッキーだったけどな。

「魔王さま! 聞いてるんスか? 酔ってませんよね? 大事な話してるんスよ!」

 ダリたちは、相変わらず俺の部屋にやってきて、無駄話をして帰ってゆく。

 ルーチンワークになっている。

「とにかくっスね、九四〇円スよ! ここは譲れないっス!」

「ダリ、でも、店長さんもムリして置いてくれてるのよ・・・」

「でも、あと百円あったら、いつものモヤシにヒキ肉をちょっとつけられるのよ! 肉よ! 肉!」

「ああ・・・」

 ダリは魔王城の財宝を抱えて転生しようとしたらしいが、それは人間国に取り上げられてしまっていた。ひどく残念がっていたが、それでもガーロもいっしょに、俺を助けるんだといって転生してくれたんだ。

 おれは缶をあおった。

 そして、ドーンと扉が開けられた。

「あはははは! 魔王! ざまあないわね! みじめなヤツ!」

 そこには魔女王が立っていた。こいつも転生させられたんだ。

 ここんところ、いつものことだ。

「あはははあん? いくらもらってるってえ? ダメね。ダメ軍団だわ。あたくしたちをごらん!」

 コートをはだけると、ラメがはいったきらびやかなドレスを着ていた。

 すぐうしろに、魔女メリュジーヌが立っていた。彼女は黒い革のボンテージ衣装に、軍服のような帽子をかぶっていた。

「くっ、コイツら!」ガーロとダリが敵意をあらわに見上げていた。

「あたくしはついに、バーレス〇東京で働くことになったのよ! どう? 六本木よ! 六本木! メリュジーヌだって、新宿のSMクラブのエースよ!」

 ふところから札束をチラ見せした。

「どう? うらやましいでしょ?」

「ち、ちくしょう!」ガーロとダリが歯ぎしりをした。血の涙を流してた。

「これ以上負けてたまるもんですか! ガーロ、わたしもこうなったら覚悟を決めるわ! この身ひとつでのし上がって見せるわ!」

「ダ、ダリ、やめて、からだは売っちゃだめよ!」

「わたし決めたわ! コスプレするわ! ユー〇ューブで稼ぐわ! それしかない!」

「魔女王さま、コイツらいますぐ、ブッ殺しましょう」

 わいわいと、いつものやり取りが続いていた。

 俺は缶に残ったチューハイの一滴を、舐めとっていた。

 ああ、しあわせだ。

 なんか、忘れてる気がするなあ・・・。

 ダリたちの後ろのテレビで、ニュースがなにか黒いものを映していたが。


                        おしまい


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異世界ゴジ◯? 強いオンナに転生したいって言ったらまさかのアレに。魔王だってプチッと踏みつぶします。 希蘭 @paradoxbreaker

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