拳銃をこちらに向けて。

ふじかわ さつき

拳銃をこちらに向けて。

アメリカでは護身用に銃を持つらしい

アメリカに憧れていたから僕も銃を買うことにした

使うつもりなんて一切ないさ

もしもの為だよ、もしものね

それが1週間前くらいだったかなあ

いざ僕の元に届くとどうしたらいいかわからなくなるんだよこれが

あー

使う使わないの話じゃなくてね

興奮してさ

なんでなんだろうね

分からないんだけど笑いが止まらなくて

いいことなんて1つもない僕の人生が

銃が目の前にあるだけで変わるなんてどうかしてるよほんとに

今日も全くいいことがなかった

思い出しただけで笑えてくるよ

あーはっははー

ほんとに笑えてくる

僕は今日、歩道もない一本道の端の方で

解けた靴紐を結んでたんだ

なんで端に寄ってたかって?

そりゃあ前から車が来てたからだよ

気が使えるんだよ、僕は!

これで車も安心して通れる!

と思っていたらその車はクラクションを鳴らしてきた

驚いて顔を上げたら車が僕の横に停まって

窓を開けたんだ

若い、同じくらいの年齢の男がこっちを見ていた

助手席にも誰か居たけど覚えていない

覚えているのはこっちを見たあの目だけだ

体の中をかき混ぜられている気分だった

実に気色の悪い、最悪の気分を一瞬にして味わった

そのゴミみたいな目と1秒ほど見つめあって

優しい僕は言ったんだ

ごめんね、ちょっと邪魔だったね

ゴミは言った

何コイツ、気色悪すぎんだろ

次の瞬間、ものすごい破裂音が耳の中を突き抜けていった

なんでだと思う…?

すごいんだよこれが

聞いて驚くなよ?

なんとね…

車の中に風船が積んであったんだ!

なぜか知らないけどこのタイミングで割れてしまった

あっはーはっは

僕たちは笑い合ったよ

そして許し合った

いいんだそんなささいなこと

僕は怒らない

怒るどころかこんなに清々しい気持ちになれたんだ君にはほんとに感謝してるよ

そして僕らは別れた

あっははーはーはー

笑いが堪えきれない

アイツは僕の気遣いを踏み躙ったんだ

それだけじゃなく気色悪いと言った

あーはーはーはー

なんで笑わないんだよ

笑えるだろ?

あんなゴミがよく人の姿してられるよな?

どうしてあんなやつが俺と同じような姿形をしてられる?

なぜゴミがいい思いをして人間はいい思いをできない?

そんなの思ってないで前向いて頑張ろうよって昔言われたんだ

後ろ向いてるやつは後ろを向いたまま顔を上げてるんだよ!

あっはは

人は生きるべきだ

あれは人じゃなかったから撃ち殺してやった

ばあああああん

あっはっはーはーはー

笑える話だろ?

でも俺は笑わない

なぜかって?

自分で考えろゴミが




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

拳銃をこちらに向けて。 ふじかわ さつき @syo3nomama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ